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冤罪 (Miscarriage of Justice) ① - 娘たちとの15年、返ってこない 東電社員殺害で冤罪 

日本の刑事司法制度の闇・・・。

 

娘たちとの15年、返ってこない 東電社員殺害で冤罪、ゴビンダ・プラサド・マイナリさん

朝日新聞デジタル

2017年11月11日16時30分

無罪確定後、初の来日でインタビューを受けるマイナリさん。左は妻のラダさん=東京都新宿区、長島一浩撮影


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 15年の大切な時間はもう返ってこない――。東京電力女性社員殺害事件(1997年)の冤罪(えんざい)被害者で無期懲役の判決を受けて服役していたゴビンダ・プラサド・マイナリさん(51)が、再審無罪確定後初めてネパールから来日し胸中を語った。


 マイナリさんが2012年に再審開始決定が出て釈放された際、直後に不法残留による強制退去処分とされた。その後、日本には入国できなかったため、日本で単独インタビューを受けるのは初めて。マイナリさんは9日、妻のラダさん(48)が同席して取材に応じ、主に日本語で答えた。自分の無実を信じて支援してくれた人や弁護団などに直接会って感謝の気持ちを伝えたい、と来日したという。


 ■ 故郷を思った花

 「いまも深く眠れない。いやな夢をいつも見る」とマイナリさんは話す。「お前が殺したんだ」「犯人はお前だ」と大声で追及され、机の上に置いた仏像に触らされて「本当のことを言え」と迫られた。「(一審で)無罪判決を受けたのに釈放してもらえなかったときは、怖かった」

 当時のことを話し始めると、マイナリさんは目を真っ赤にした。計15年間、身柄を拘束された拘置所や刑務所で、精神安定剤睡眠薬を手放せなくなった。支えは「自分はやっていない」という思い。面会の支援者や弁護士、家族から届く手紙にも励まされた。

 小さなことに心の安らぎを見いだした。拘置所の窓から聞こえたハトのつがいの甘い鳴き声が愛のささやきのように感じられ、妻を思った。刑務所では、運動に出るグラウンドで、マリーゴールドの花が咲いているのを見つけ、看守に見つからないように1輪摘んだ。ポケットの中に隠して房に持ち帰った。マリーゴールドはネパールの祭りで首飾りをつくる花。房の中でこっそり香りをかぎ、ひとり故郷のことを思った。


 ■ 成長を見られず

 マイナリさんが日本に観光ビザでやって来たのは94年。国を離れたとき、2人の娘は2歳と6カ月。5年前に帰国したときには、20歳と18歳になっていた。

 「帰ったとき、娘は精神安定剤を飲んでいた。学校でいじめられたこともあったと聞いた。娘たちも傷ついた」。家族が再びまとまることは難しかったか、との問いに、マイナリさんは答えなかった。「娘たちを抱いたり、一緒に遊んだりすることができなかった。子どもの成長を見ることができなかった。残念で仕方がない」。娘はそれぞれ結婚し、家を出たという。

 現在はカトマンズの自宅でラダさんと暮らす。ラダさんによると、帰国したマイナリさんは、以前と異なり、ちょっとしたことで怒り、ドアを蹴飛ばすこともあった。「夫は緊張してストレスをためていた」

 マイナリさん自身も怒りっぽくなったことを認める。「人が自分のことを話しているとそれが気になってしょうがない」「僕の若さはもう戻ってこない。僕の人生の一番いい時期は刑務所の中だった

 事件では、警察がマイナリさんと同居していたネパール人に、マイナリさんに不利になる証言を強要したことや、検察が被害女性の体内から採取した第三者の精液の証拠を明らかにしなかったことなどがわかっている。

 「警察は私の友人にウソを言わせ、検察は証拠を隠し持っていた。それは、ひどいことです」「事件の真犯人をつかまえてほしい。そして、警察や検察、裁判所は二度と冤罪が起こらないよう、正義をなしてほしい」。マイナリさんは繰り返した。(編集委員・大久保真紀)


 ◆ キーワード

 <東京電力女性社員殺害事件> 1997年3月、東京都渋谷区円山町のアパートで東京電力の女性社員が殺害され現金4万円が奪われる事件が発生。警視庁は隣のマンションに住むゴビンダ・プラサド・マイナリさんを出入国管理法違反(不法滞在)容疑で逮捕。同罪の有罪判決後、強盗殺人容疑で逮捕した。

 マイナリさんは一貫して無実を主張。東京地裁は2000年4月、無罪判決を出したが、二審判決は無期懲役となり、03年に最高裁で確定した。

 05年から始まった東京高裁での再審請求審で、遺体の付着物などの新証拠が検察側から開示され、DNA型鑑定を実施。東京高裁は12年、再審開始を決定し、刑の執行を停止、マイナリさんは帰国した。その後、再審で無罪が確定した。

 

日本:東電社員殺害事件 - 刑事司法の抜本的改革を進めよ : アムネスティ日本 AMNESTY

2012年10月29日[日本支部声明]国・地域:日本トピック:取調べの可視化

2012年10月29日、いわゆる「東電社員殺害事件」についての、東京高等裁判所における再審公判が即日結審した。マイナリさんの無罪が確実となったことを受け、アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府に対して、捜査取調べの改革をはじめとする刑事司法制度の全面的な見直しを行うよう、改めて要請する。
 

本件では、別件逮捕代用監獄制度に基づく取調べと自白の強要など、当初より警察による捜査過程での問題が存在した。また、無期懲役刑が確定した裁判の公判過程においても、検察による無罪につながる有力な証拠の不開示という、真実発見を妨げ、被告人の人権を著しく侵害する不正義があった。

日本政府および捜査当局は、2008年の国連自由権規約委員会の勧告にある「刑事捜査における警察の役割は、真実を確定することではなく、裁判のために証拠を収集することである」との指摘を、改めて銘記しなければならない。そして、日本政府は、こうした事態の再発防止のために、独立した第三者機関による徹底的な真相究明を行い、被害者への謝罪と賠償、そして責任の所在を明らかにするべきである。

さらに、日本政府は、このような深刻な人権侵害を繰り返さないよう、刑事司法制度の改革に一層努めるべきである。この改革には、代用監獄制度の廃止、被疑者取調べの時間制限、取調べの全過程の録音・録画(可視化)や弁護人の立会いの保障、警察官に対する国際人権基準の研修、証拠の全面開示などが含まれる。また、立法府は、こうした制度改善のために必要な立法措置を速やかに実施しなければならない。これ以上、人権侵害の温床となっている刑事司法制度の諸問題を放置してはならない。

アムネスティ日本は、日本政府当局に対し、取調べの可視化と代用監獄制度の廃止をはじめとする、刑事司法制度の抜本的改革を進めるよう求めるものである。

2012年10月29日
公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本