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2017年衆議院選挙 - 自民勝たせた? 「若者の意識」

選挙を考える

 

10代46%・20代47%、自民へ 衆院選・朝日新聞社出口調査

朝日新聞デジタル

2017年10月30日05時00分

 

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 朝日新聞社出口調査からは、特に30代以下の若い層で安倍政権への評価が高いことがうかがえる。

 比例区の投票先を年代別にみると、10代では46%が自民に投票。20代は47%、30代も39%が自民に入れ、他の年代より高かった。選挙区では10代の52%、20代の55%、30代の51%が自民候補に投票したと答えた。

 調査では(1)アベノミクスの評価、(2)自衛隊を明記する憲法9条改正の賛否、(3)安倍政権の継続を望むか、も聞いた。3問とも全体では賛否が拮抗(きっこう)する中、30代以下の評価は高めだった。

 10代の60%がアベノミクスを「評価する」と答え、20代は62%、30代は56%と、全体平均の48%より高い。憲法9条改正も、10代と30代は52%、20代は56%が「賛成」と答え、「反対」を上回った。選挙後も「安倍政権が続くのがよい」と答えた10代は58%、20代61%、30代54%。

 調査は全国8577の投票所で行い、計38万5826人から有効回答を得た。(四登敬)

 

自民勝たせた若者の意識 「青春=反権力」幻想に

毎日新聞

 若者は「保守化」しているのだろうか。そんな疑問が湧く。先月の衆院選では、10代、20代の自民党支持が他の世代に比べて突出して高かったからだ。「自民支持」の背景を探った。【庄司哲也】

 

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 若者の投票行動は数字に表れている。まず、共同通信が投票日に行った出口調査を見てみよう。比例代表東京ブロックの投票先では、

10代の47・2%、20代の42・1%が「自民」と回答。一方、30代~70歳以上の世代では20%台後半から30%台だった。60代では「自民」が28・3%だったのに対し、「立憲民主」は28・4%とわずかだが逆転した。若者が自民を支持する傾向は他の比例ブロックでも見られた。 

高校生を対象にした意識調査

 なぜ、自民支持の若者が多いのだろう。「選挙で野党は『森友・加計(かけ)学園問題』を訴えたが、政策の議論とは言えない。三権分立なのに、立法府に属する議員の候補者たちが司法の独立を侵食しているようにも見え、支持できませんでした」。慶応大1年の野上奨之輔さん(19)はそう話す。投票しなかったが、どちらかといえば「自民支持」という。

 若者特有の事情ものぞく。早稲田大2年の桑原唯さん(20)は「最大の関心事は就職です。一時に比べれば就職状況は改善しており、政権交代でこの状況が変わるようなことは避けたい」と、胸の内を明かした。

 自民大勝は、有権者が離合集散を繰り広げた野党に嫌気が差し、よりましな選択肢として自民に投票したと説明できそうだ。さらに、若者に関する気になる調査結果を見つけた。

 大阪大特任教授の友枝敏雄さん(社会学)の研究チームが、2001年から6年ごとに3回にわたり、福岡などの高校生延べ1万人超を対象に行った意識調査だ。グラフを見てほしい。例えば「校則を守るのは当然か」という質問に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた生徒の合計が、68・3%(01年)▽75・4%(07年)▽87・9%(13年)と大幅に増加。さらに「日本の文化・伝統はほかの国よりも優れている」への賛意は、29・6%(01年)▽38・7%(07年)▽55・7%(13年)と年々伸び続けているのだ。

 

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 友枝さんは「リスクの多い社会では、従来の規律から逸脱するよりも同調した方がいい。そのため今の若者は縦社会を好む傾向にあり、秩序の維持を大切にするのです」と分析する。「空気を読んで従順」という姿が浮かぶ

 

 また、友枝さんは、今の若者には、従来の「公共空間」に加え、ネット世界の「炎上空間」という二つの空間があることに気がついた。「若者は自己保身の意識が強い。公共空間で目立ってしまうと、そこでは面と向かって言われなくても、炎上空間でたたかれてしまう。だから論争を起こすことを避けるのです」

 

 集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法を巡って反対運動を続けた学生団体「SEALDs」(シールズ、昨年8月解散)の元メンバーらで設立した新団体「未来のための公共」に加わる大学3年生、馬場ゆきのさん(20)も「自分の主張を話すのはよくないという風潮があると感じます。私もこうした活動をしなければ、デモに対して悪いイメージを抱いていたかもしれません」と、目立ちたくない若者の特徴を説明する。

 

 昔からの習慣や制度を守ることを大切にし、不満を口にせず、現体制の維持を望む。政治的な変革も好まずに与党の自民党に票を入れる--。今の若者の意識を知ると「青春=反権力」はもはや幻想なのかもしれない。

 

国への執心、空虚感の裏返しか

 自民支持が増えたのは若者の右傾化が要因という論調もある。一時期、右翼団体で活動していた作家・社会活動家の雨宮処凛さんに意見を求めると、加入動機から語り始めた。「右翼団体に入るまでは社会の息苦しさを自分一人で抱え込んでいました。でも、右翼団体の人が『お前のせいじゃない』と言ってくれたことで、気持ちが楽になりました」

 

 雨宮さんは「就職氷河期」の1993~05年ごろに社会人となったロストジェネレーション(失われた世代)だ。バブル崩壊後、希望していた美大への進学を諦め、フリーターになった。その職場では外国人労働者と競わされた。「ここが日本の底辺と思っていました。『日本人に比べ外国人は時給が安いのによく働く』と言われた。私と外国人との違いは、日本人であるということ以外になかったのです」と、右寄りの思想になった背景を説明した。

 

 現在の日本はどうか。雇用状況の改善は、非正規雇用の増加が主な要因だし、人口減の日本社会は経済成長のシナリオを描けない。若者はフラストレーションをためているのではないか。「自分には何もないと感じるから国に過剰な思い入れを持つ。閉塞(へいそく)感をぶつけるように改憲を訴える若者の姿はかつての私のようです」と雨宮さんは感じている。

 

 06年から10年間、新入生のゼミを担当した首都大学東京教授の谷口功一さん(法哲学)は、憲法9条に関するリポートを書かせてきた。これまでの学生の意識は6対4で改憲派護憲派を上回っていた。中には「北朝鮮にミサイルを撃ち込め」と書いた女子学生もいた。だからといって谷口さんは、単純に「若者の保守化が原因」と決め付けることには懐疑的だ。最近、学生に「リベラルな政党はどの政党か」という質問をしたところ、立憲民主、共産、自民、希望の党と、全くばらばらの回答だったからだ。

 

 そもそも日本ではリベラルや保守の定義が明確ではない。「米国では経済政策の対立軸について、政府が社会や市場に対して積極的に介入し、増税大きな政府を志向するのがリベラル。これに対し、市場での自由競争を重視し、減税や小さな政府を志向するのが保守です。でも、日本では護憲か改憲かなどといったイデオロギー的な側面が強調されています」

 

 さらにいわゆる「55年体制」からの考えにとらわれ過ぎだと指摘する。「今の学生たちはそんな考え方に縛られていません。保守=右派、リベラル=左派と位置付けてはいないのです」と話す。

 

 慶応大に在学しながら学習塾を経営する今井美槻さん(25)は「かつて『革新勢力』と呼ばれた野党は対案を示そうとしません。日の丸や君が代に反対するが、代わりの国旗や国歌を示したことがあるでしょうか。それでは議論のしようがない。新たな動き、変化の足を引っ張る政党こそ、もはや『保守』と見るべきでしょう」と話した。

 

 安全保障を見直し、消費増税改憲といった改革を訴える自民こそ、若者には「革新」に見え、護憲を訴える共産党などは「保守」に映るのかもしれない。

 

 このまま若者が自民を支持していく傾向は変わらないままのようにみえるが、慶応大1年の大倉康寛さん(20)は「私たちの世代は物心ついた時に民主党政権ができ、投票で政権が代わることを知っている世代でもあるんです」と答えた。決して若者の自民支持は盤石ではないのだろう。

 

 高齢者中心の「シルバーポリティクス」が言われる。新たな若者の意識を上の世代はくみとれるだろうか。