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Social Darwinism = 日本の人類学研究と科学的人種差別 = 対話を拒絶する大学側と、今もすすまない遺骨返還

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京都大学が盗掘した琉球人骨を返さぬワケ 政府や旧帝大関係者も絶対認めない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 

 

 

沖縄の聖地に弔われていた遺骨が、なぜ京都大学の研究室の倉庫に埋もれているのでしょう。そして返還要請に対して、なぜ京都大学は沈黙を続けているのでしょう。

 

沖縄で収集遺骨、京大に返還要請へ 昭和初期の26体 (京都新聞) - Yahoo!ニュース 

1/21(日) 10:31配信

 京都帝国大医学部解剖学教室助教授だった金関丈夫が昭和4(1929)年、沖縄県今帰仁村(なきじんそん)にある村指定文化財「百按司(ももじゃな)墓」から研究目的で京大に持ち帰った人骨について、今帰仁村教育委員会が返還を求めて京大と交渉する方針であることが、20日分かった。村教委は京大が少なくとも26体、保管しているとみている。


 アイヌ民族の遺骨を巡っては旧帝国大が人類学などの研究目的に無断で掘り出した遺骨の返還が問題になっているが、京大が収集人骨の返還に応じた例はないとみられる。また、自治体が大学に返還を要請するのも異例だ。

 

 金関が戦前公表した雑誌連載によると、按司から多数の人骨を採取。古人骨だけでなく、当時でみて「最近の人骨」もあった。行き倒れた人を埋葬した那覇市内の墓地でも10体を掘り、中城村(なかぐすくそん)では無断で墓地から人骨を持ち去ろうとして現地の人から制止されたことなどを記述している。のち金関は、日本領だった台湾の台北帝国大(現・台湾大)医学部教授に就任した。

 

 今帰仁村教委によると昨年11月、台湾大から、金関が医学部に持ち込むなどした人骨63体分を現地に返還したいと申し出があった。

 

 同月29日に沖縄県教委と村教委が合同で受け入れると回答。2004年に百按司墓木棺を修理した際、村教委は京大総合博物館で百按司墓から持ち出されたとみられる人骨26体分を確認していたことや、台湾大が保管するのはすべて頭骨のみであることから、京大にも返還できないか要請していくことにしたという。


 これとは別に、琉球民族遺骨返還研究会」の松島泰勝龍谷大教授らは、京大が沖縄から持ち去った人骨の保管数や保管状況について回答を拒んでいることなどから、アイヌ団体が北海道大を相手取り遺骨返還訴訟を起こし、返還が実現していることを参考に、人骨返還訴訟の提訴を視野に運動を進めている。

 沖縄で収集した遺骨について、京大広報課は京都新聞の取材に、「問い合わせに応じない」としている。


■ 百按司
 今帰仁村運天の崖の中腹にある墓所按司とは地方の有力首長の呼称で、「数多くの按司の墓」の意味。16世紀以前に成立したとの見方もあり、漆を塗った家型の木棺など、琉球の葬制を知る上で最古級の資料とされる。

 

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し、しかも信じられない・・・。

嘘をついていたんでしょうか。

 

京大の琉球遺骨返還問題、別の学者が74体収集 大学側の「手続き経た」根拠揺らぐ

 

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京都帝国大が戦前に沖縄の墓地から収集した遺骨を沖縄県の一部住民らが返還を求めている問題で、現在京都大が保管している26体は、1体を除き京大が説明している金関丈夫・医学部助教授(のち台北帝国大教授、九州大教授)が収集した遺骨ではなく、医学部の三宅宗悦講師が収集した約70体の一部であることを、同志社大の板垣竜太教授(文化人類学)が突き止めた。

 

 京都帝大医学部は戦前、アイヌ民族や少数先住民族の遺骨を収集しており、うち沖縄県今帰仁(なきじん)村にある百按司(ももじゃな)墓から持ち出した遺骨については、沖縄県出身の大学教授らが京大に返還を求めた訴訟が京都地裁で係争中。

 

 京大側は、1929年に京都帝大医学部の「金関助教授が持ち出した人骨」を保管していることを認めつつ、金関氏の随筆に基づき「当時必要と考えられる手続きを経た」として犯罪行為ではないと主張してきた。京大が保管している遺骨は別のルートで集められたものが大半だとすれば、京大側の主張が揺らぐことになる。

 

 板垣教授はこのほど、金関助教授の調査から4年後の33年に京大医学部の三宅講師(44年戦死)が奄美大島沖縄本島で人骨を収集したとの文献や、同講師の遺品を調査し、三宅講師が所属した清野謙次教授の教室による人骨コレクション番号と、2004年京大総合博物館調査で判明した琉球人骨26体に付されていた番号を照合。このほど論文にまとめた。

 

 その結果、京大の人骨コレクションは、解剖学教室系統の金関コレクション(70~80体)とは別に、三宅講師が収集した奄美人骨81体、琉球人骨71体が「清野コレクション」の一部として終戦ごろは京大に存在したことを明らかにした。

 

 清野教授も沖縄遺骨を収集したのは三宅講師と論文で明かしている。一方、故金関氏は、沖縄で集めた人骨を京大から赴任先の台北帝国大(現在の台湾大)へ運んだと、戦後の論文で振り返っている。遺骨をすべて台湾へ運んだのか、一部は京大に残したかは不明だが、台湾大は昨年、沖縄県教育委員会に遺骨63体分を返還した。

 

 19日に京都地裁で開かれた琉球遺骨返還訴訟の口頭弁論で、京大側は、「三宅講師が沖縄県内国頭、中頭、島尻等から人骨を採集した事実は認める」とし、現在保管している遺骨が三宅講師収集かは「争わない」とした。また京大側は、三宅講師が沖縄県本部町渡久地の墓で収集した人骨を占有していると、初めて認めた。

京大の琉球遺骨返還問題、別の学者が74体収集 大学側の「手続き経た」根拠揺らぐ|社会|地域のニュース|京都新聞

 

ダーウィン (Charles Darwin) の進化論 (evolution theory) は、その進化のメカニズムとして自然淘汰論 (natural selection) を説いたものでした。ところが百五十年前のヨーロッパ社会は、人間はサルから進化したという進化論そのものには懐疑的でありながらも、「自然淘汰による進化論」を社会や人種へと適用していくことには何の抵抗もなかったようです。

 

そうして、ソーシャル・ダーウィニズムが生まれていきました。自分とは異なる人種や民族は、自分たちより進化論的に劣っているのだ、だから植民地政策も帝国主義も当然のことなのだという人種差別論を、大学の研究で科学的に「立証」しようとしたのです。だからこれを科学的人種差別 (scientific racism) とも呼びます。

 

Scientific Racism について ⇩

sophist.hatenablog.com

 

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これが 150年前のフェイクニュース。アフリカ系の人の頭蓋骨を見てください。全く人間の頭蓋骨などではありません。それでもこうした偽科学を信じてしまった人たちは、大勢いたのです。いまもネットに DND 研究などを語る手の込んだ人種差別論が拡散されています。気をつけましょう。

 

こうしたヨーロッパの大国の帝国主義植民地主義、人種差別を、なんと日本も内面化し、アジアの中でいかに「日本人」が優秀な人種であるのかを実証しようとした。それが日本の人類学のスターティング・ポイントでもありました。

 

そうした日本の人類学者と帝国大学は、大陸や、北海道や、沖縄で、たくさんの頭蓋骨を収集し、科学的人種差別論の研究に猛進していったのです。ですから、日本の大学にはたくさんのアイヌの人たちや沖縄の人たちの遺骨が奪われたまま返還されていません。アイヌの人たちも沖縄の人たちも返還するように声をあげているにも関わらず、なのです。

 

年に何度もニュースになっていますが、忘れないようにできるだけ記録していきたいと思います。

 

こんな古い琉球の地元の貴族たちの墓から頭蓋骨を本土に持ち帰ったまま所有、また新しい骨まで。しかも今の人類学の研究にはなんの使用目的もなく、古い研究室の倉庫に入れられているだけです。

 

なぜ京大は対話すら拒絶するのか。私たちも京都で学ぶものとして、しっかりとこれからも京大の対応を見ていきたいでね。

 

2020年11月20日 京大の琉球遺骨返還問題、別の学者が74体収集 大学側の「手続き経た」根拠揺らぐ|社会|地域のニュース|京都新聞

www.kyoto-np.co.jp

 

日本軍が首里城に拠点を構え、沖縄の歴史と文化を守る措置をほとんど何も取らなかったために、沖縄戦では県民の25%に近いおびただしい人命が奪われただけではなく、多くの歴史的な遺構や文物が灰燼に帰すこととなりました。日本軍は沖縄の亀甲墓を避難場所や拠点としたために、遺骨すら墓の外に放り出しました。また戦後は多くの亀甲墓や遺跡が米軍基地の中にとりこまれ、アクセスはおろか、発掘研究することもできない状態になっています。

 

今説に求められることは、誠実に対応することです。

 

歴史的にあったこと、すべて理解していて、しかも世界中で返還事業が進められている中、それでも対応しない京大の人類学研究というのは、根っこの部分が100年前と変わらないのではない、植民地主義のための人類学とみなされても仕方ないのではないかと思います。

 

 

usslave.blogspot.jp 

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