Sophist Almanac

世界について知りたいとき

1749年7月2日 稲生もののけ物語 ~ 火が燃える、そして水があふれる

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「芸州武太夫物語絵巻」(立花家史料館蔵)

 

稲生もののけ物語、『稲生物怪録』(いのうぶっかいろく)は、江戸中期、寛延2年(1749年)の備後三次(現在の広島県三次市)のひとりの少年が経験した一か月にわたる物の怪との出会いをまとめた記録。稲生武太夫(幼名・平太郎)が体験したという、妖怪にまつわる怪異をとりまとめた記録。毎日毎日、飽きることなくいろんな「もののけ」がやってきます。

 

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「芸州武太夫物語絵巻」(立花家史料館蔵)

1749年7月2日 火が燃える、そして水があふれる

昨日、とんでもないことがおこってしまい、屋敷には平太郎ひとりが残された。そして夜、「へんげ」がおこる。

 

『三次実録物語』現代語訳

さて、二日の夜、あんどんをとぼしていたところ、ともしびがだんだん細くなって、ほどなくあんどんの上にでて、細く筋になって四、五尺 (1.5 m) ばかりになってしまい、すぐに天井について天井がのこらず焼けてしまう。火花、ほこり、ちり、屋根がみえ、ただちに屋根へつき、ほろほろと燃えているのだが、

 

「あのともしびが焼けてしまったのは変化 (へんげ) のわざによるもの」だと、「自分の体にひがつくまで、うろたえたりはしないぞ」と思って、「もし本当であれば、外のひとがかならず騒ぐだろう」とおもって、ほったらかしにしていると、ほどなく、もとのとおりの天井に戻った。

 

それから布団を敷き寝ていたところ、生臭いにおいが激しく、水が耳に吹き込んできて、蚊帳、ふとん、臥筵 (なにこれ)、畳がびっしょりとぬれるのだが、そのままほどなく寝入ってしまう。夜が明けて見れば、生臭いにおいはすこしもなく、そこらじゅう、水にぬれていました。