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Barack Obama - Biography - オバマさんって、どんな人 ???

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学んだあと、簡単な Mini Bio の動画を見てみよう。知識があると全然聞きやすいね ! 

 

 自伝の紹介

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書評・最新書評 : マイ・ドリーム-バラク・オバマ自伝/合衆国再生-大いなる希望を抱いて

 朝日新聞社の書評サイト

 

■ 類型化できない個人史の面白さ

 ビル・クリントンこそはアメリカ初の黒人大統領だ——こんな風説を広く知らしめたのは、黒人(女性)としてアメリカ初のノーベル文学賞作家となったトニ・モリスン。たしかに、白人とはいえアーカンソー州の貧しい労働者階級から身を起こし、ジャズ・サックスを吹き、大統領職が終わると黒人街ハーレムに事務所を開いた彼は、かつてリンカーン大統領が象徴した「丸太小屋(ログハウス)から大統領官邸(ホワイトハウス)へ」なる立身出世神話の再現者として人気を呼び、98年の不倫スキャンダルの渦中ですら黒人共同体からの信頼は根強く、いまも名誉黒人としての地位を保つ。

 

 したがって、そんな彼が強力に後押しする夫人ヒラリーと、文字どおり黒人の血を引くオバマ民主党内で激突する大統領選ほどセンセーショナルなものはない。

 

 もともと「バラク」は「恵まれたもの」の意。彼と同名の父はケニア出身で、ハワイ大学にてカンザス州出身の白人娘と恋に落ちたのだった。ところが61年、ふたりのあいだに著者が生まれてまもなく、父はハーバード大学の博士課程に進むことになったものの、経済的事情からアフリカへ帰る。のちに人類学者となる母は同じくハワイ大学で知り合うインドネシア人と再婚。その縁で、一家はスカルノ政権が失脚し、共産主義者が一掃された直後の67年、激動のインドネシアへ移住。そこで目撃したのが、アメリカ国内ならふだんは隠されたままで、インディアン居留地の住人や親しい黒人と話して初めて露呈する「力(power)」が街中にあふれ、人間を決して逃さず引き戻し「自分の人生が自分の思い通りにはならない」ことを実感させる世界だった。自伝『マイ・ドリーム』(初版95年)で鮮烈に語られる、オバマの政治的原風景である。

 

 その後の人生は、典型的な中産階級出身のエリート知識人の成功物語と映るだろう。名門コロンビア大学を経てハーバード大学法科大学院へ進み、黒人としては初めて法律専門誌「ハーバード・ロー・レビュー」の編集長を務め、人権派弁護士として活躍、そしてイリノイ州議会議員を経て、2005年よりアメリカ合衆国上院議員。しかし、『合衆国再生』(初版2006年)を併せ読むと浮かび上がってくるのは、アメリカ原住民やアフリカ黒人、白人の血とともにキリスト教イスラームも、ときに仏教すらやすやすと併存し習合しうるひとつの巨大で多文化的な家族史であり、おそらくはそれゆえに、異なる価値観に対しても驚くほど寛容な男の肖像である。たとえば彼は、イラク戦争その他の点でブッシュ大統領の政策には批判的でも、人間としてのブッシュについては偏見なく理解してかかろうとする。著者自身を判断するにも既成の人種的偏見では歯が立たないゆえんだ。類型的な名誉白人にも黒人運動家にも収まらないバラク・オバマという人間のおもしろさは、彼自身の個人史が期せずして「文化のサラダボウル」としてのアメリカを、そして来るべき民主主義という希望の地平を、体現してしまっているところにひそむ。

 

 [評]巽孝之 慶応大学教授・アメリカ文学
   *
 『マイ・ドリーム』白倉三紀子・木内裕也訳、ダイヤモンド社・2520円▽『合衆国再生』棚橋志行訳、楓書店発行・ダイヤモンド社発売・1995円/Barack Obama 61年生まれ。

 

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