Sophist Almanac

世界について知りたいとき

Charles Chaplin, The Dictator - チャップリンの『独裁者』- 二十世紀最高のスピーチを聞いてみよう ! - 英語耳 ②

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学生時代にちゃんと見ておきたい映画はいっぱいあるね。

働きだすと忙しすぎて「名画をちゃんと見ておく」時間がないのよ~。

 

で、学生時代に一貫して何度も見てきた映画は

ちゃーんと、自分の中宝物のようにある。

 

だから、

チャールズ・チャップリン監督の名画シリーズとか、

 

一番好きなチャップリンの映画はこれ ⇩

もう、めちゃくちゃ笑えるし、すっごく深くて悲しい。

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フェデリコ・フェリーニ監督シリーズとか、

タルコフスキー監督シリーズとか、

スパイク・リー監督シリーズとか、

 

テーマを絞ってみていくといいよ。

 

今日は、チャップリンのあの名画を紹介。

 

youtu.be

 

blog.goo.ne.jp

 

1分40秒のあのスピーチで、リスニング能力は飛躍的に向上する|今さらながら「英語耳」を育てる最善の方法

クーリエ・ジャポン

チャップリンの映画『独裁者』のラストシーン


もう一つ、「20世紀の最高の演説」と国際的に称えられているものに映画俳優兼監督のチャーリー・チャップリンのスピーチがある。

映画『独裁者』(原題:The Great Dictator, 1940)の中で、ヒトラーをモデルにした独裁者と顔がそっくりユダヤ人理髪店主が、独裁者に間違えられてラジオで演説をする羽目になって、そこで意を決して大演説をぶつ場面だ。



これもYouTubeで簡単に見られるし、演説の原稿もネットで読める。以下がその全文だ。

Charlie Chaplin’s “Great Dictator” (1940) speech

“I’m sorry, but I don’t want to be an emperor. That’s not my business. I don’t want to rule or conquer anyone. I should like to help everyone―if possible―Jew, Gentile―black man―white. We all want to help one another. Human beings are like that. We want to live by each other’s happiness―not by each other’s misery. We don’t want to hate and despise one another.

In this world there is room for everyone. And the good earth is rich and can provide for everyone. The way of life can be free and beautiful, but we have lost the way. Greed has poisoned men’s souls, has barricaded the world with hate, has goose-stepped us into misery and bloodshed. We have developed speed, but we have shut ourselves in. Machinery that gives abundance has left us in want. Our knowledge has made us cynical, our cleverness hard and unkind. We think too much and feel too little. More than machinery we need humanity. More than cleverness we need kindness and gentleness. Without these qualities, life will be violent and all will be lost . . . !

The aeroplane and the radio have brought us closer together. The very nature of these inventions cries out for the goodness in men—cries out for universal brotherhood—for the unity of us all. Even now my voice is reaching millions throughout the world—millions of despairing men, women, and little children—victims of a system that makes men torture and imprison innocent people.

To those who can hear me, I say—do not despair. The misery that is now upon us is but the passing of greed—the bitterness of men who fear the way of human progress. The hate of men will pass, and dictators die, and the power they took from the people will return to the people. And so long as men die, liberty will never perish. . . . . .

Soldiers! don’t give yourselves to brutes—men who despise you—enslave you—who regiment your lives—tell you what to do—what to think and what to feel! Who drill you—diet you—treat you like cattle, use you as cannon fodder. Don’t give yourselves to these unnatural men—machine men with machine minds and machine hearts! You are not machines! You are not cattle! You are men! You have the love of humanity in your hearts! You don’t hate! Only the unloved hate—the unloved and the unnatural! Soldiers! Don’t fight for slavery! Fight for liberty!

In the 17th Chapter of St. Luke it is written: “the Kingdom of God is within man”—not one man nor a group of men, but in all men! In you! You, the people, have the power—the power to create machines. The power to create happiness! You, the people, have the power to make this life free and beautiful, to make this life a wonderful adventure. Then—in the name of democracy—let us use that power—let us all unite. Let us fight for a new world—a decent world that will give men a chance to work—that will give youth a future and old age a security. By the promise of these things, brutes have risen to power. But they lie! They do not fulfil that promise. They never will! Dictators free themselves but they enslave the people! Now let us fight to fulfil that promise! Let us fight to free the world—to do away with national barriers—to do away with greed, with hate and intolerance. Let us fight for a world of reason, a world where science and progress will lead to all men’s happiness. Soldiers! in the name of democracy, let us all unite!”

このスピーチは全文620語。先ほどのリンカーン演説の2.3倍の分量だが、一読してわかる通り、ほぼ全文、きわめて易しい単語しか使っていない。日本人でも高校1~2年生なら知らない単語は10語以下だろう。全部で6パラグラフ、単文の積み重ねで論旨も明快で、ネイティブなら間違いなく小学4~5年生で充分わかる内容だ。

さて、読者はこれをあらためて声に出して読んでみてほしい。読み終えるのに何分何秒かかるだろうか。

普通の日本人でこれを5分以内で朗読できる人はほとんどいないと思う。6~8分で読めれば上等、大学生レベルの英語力がある、と認めよう。10分以内で高校2年生レベル、10分以上かかる人は中学3年生レベルの英語力だと判断すればいいだろう。

読者の多くは第2パラグラフまで読み終えたあたりで、もうつっかえながら朗読するのが嫌になるのではないだろうか。読むのが遅い人ほど、読み上げるのに精いっぱいで、中身が何かもわからなくなりやすい。文意がわかる人ほどスムーズに文章が追え、自然に読むスピードも速くなる。

つまり自分の耳が英語を聴き取る力がある人ほど速く読める、というわけだ。

これを映画のチャップリンは3分30秒(210秒)で演説している。10秒当たり29語と、かなりの速度だ。

最初、静かに始まり、ごく普通のスピードで第2パラグラフの終わり、“life will be violent and all will be lost . . . !”までがちょうど60秒だ。第1パラグラフが70語、第2パラグラフが116語なので、ここまで1分間に186語のスピードだ。

つまりリンカーンの演説に比べてほぼ2倍のスピードになっている。マイクの前での演説、ということで、誰にもわかりやすく、単文の畳みかけで、あちこちに巧みに韻を踏んで、流れるようなリズムがある。

第3パラグラフあたりからだんだん本人が興奮してきて、第5パラグラフの“Soldiers! don’t give yourselves to brutes―”あたりはまさにアジ演説そのもの、という感じで声を張り上げて歯切れよくまくし立て、迫力充分だ。

そして最後の“Soldiers! in the name of democracy, let us all unite!”は、明らかに歴史上有名なカール・マルクスの『共産党宣言』(1848)が呼びかけた「万国の労働者よ、団結せよ」をもじっている。

このため、この映画は片や「反ファシズムの堂々たる歴史的な名演説」と絶賛される一方、「チャップリン共産主義者と同じアジテーター(煽動家)だ」と厳しく批判を受けることにもなった。

映画としては、パロディ喜劇だったのが最後にあまりにパセティック(悲愴)な政治的プロパガンダ(宣伝)になっているのが問題だ、という批評は今日に至るまで少なくない。だが、この演説自体は内容も素晴らしいし、格調の高さ、レトリック(修辞)の見事さで非常に優れた名演説であることは間違いない。

この映画製作にあたってチャップリンは、自分と同年生まれのアドルフ・ヒトラーを強く意識し、「反ナチスになるのにユダヤ人である必要はない。まともな人間なら必ずナチスに反対するはずだ」と信じて、この演説草稿も数ヵ月もかけて入念に練り直したという。

それだけあちこちに思わず感心するような名文句、フレーズがたくさん含まれている。英語学習者としては、それらを覚えて日常会話の中にさりげなく入れると、ネイティブを感心させ、会話をいっそう盛り上げることができるだろう。

目標は「10秒で15語」


冒頭に示したように、ネイティブの日常会話のスピードは10秒で20~25語くらいになる。それを聴き取るためには、自分も同じスピードで話せる必要はないが、それに近いスピード、つまり10秒で15~18語くらいで話せるようになるのを目標にすればよい。

そのための訓練として、このチャップリンのスピーチをお手本にしながら、最初は声に出して繰り返し読み上げ、少しずつ1文ごと、パラグラフごとに、英文を見ないで何度も暗誦し、そのスピードを徐々に速めていくといい。そういう練習を繰り返して初めて「英語のスピードに耳が慣れる」効果が期待できるはずだ。

ちなみに、リンカーンチャップリンがともにperishという単語を使っていることに注意してみよう。チャップリンは明らかにこの単語をリンカーン演説のさわりを意識して“liberty will never perish . . .”と言っている。

「人民による政府」も「自由」もまさに民主主義の根幹をなす「生き物」であり、それは普通の人々(people)が常に努力してつくり育てていかなければならないもので、もし放置すればたちまち鮮度を失い、腐り、形骸化して干からびてしまうものだ、という意味が込められている。

だからこそ、単に「存在するものが見えなくなる」という意味のdisappearではなく“perish”が使われているし、ついでに野菜や魚などの生鮮食料品のことをperishableと呼ぶ意味がわかるだろう。

また米国の奴隷解放運動を進めたリンカーン、あらゆる人種差別に反対したチャップリンの演説が、いずれも「国家と人民」の関係を最重要課題にしていた事実を押さえると、その先に第35代大統領、J・F・ケネディの就任演説(1961)の結語に近い部分で“And so, my fellow Americans: Ask not what your country can do for you―ask what you can do for your country.”という呼びかけがあり、さらに市民権運動の指導者になった黒人牧師、M・L・キング牧師の首都ワシントン広場での“I have a dream”演説(1963)に直結することがわかってくる。

そしてこの名演説者の3人とも暗殺され、チャップリンも1952年に事実上アメリカから追放されたという米国史の暗部についても否応なく考えさせられる。

優れた演説を覚え、その意味を深く考えていくことで、自分のアメリカを見る眼を養い、翻って日本のあり方をより深く考える──それこそが英語を学ぶ者の最も大切なことではないだろうか。

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日本語で言えることの8割以上を英語でも言えるようになるためにはどうすればいいのか。学生、ビジネスパーソン、そして教育関係者まで、あらゆる人の参考になる一冊。


以上、2つの例を挙げたが、このように自分で実際に声に出して読んでみて、そのスピードをネイティブ並みに近づけていく練習を続けることが「英語耳」を育てる最善、最短の方法だと私は考えている。

その素材としては、別に上に示したような演説でなくてもよい。ラジオ、テレビ、ビデオなど何でもよい、自分の関心のあるニュースの解説や好きな映画を何度も繰り返し見て、特に気に入った場面を、30秒から1~2分の長さのものを繰り返し聴いて、そのスピードに慣れること、そしてその真似をして暗誦することだ。

それを続けていると、徐々に「聴き分けられる」力がつき、同時に「それらしく」発音できるようになるものだ。

世の中に大量に出回っている教材で「聞き流すだけで英語耳ができる」とか「自然に話せるようになる」とかいうのはほとんど誇大宣伝であり、そういう教材も今言ったような暗誦訓練の素材として使ってこそ、初めて効果が出てくるものだと私は考えている。

また、そういう「聴き取り」練習の際、聴いたことをそのまま英文で書き写すことが効果をいっそう高めることに役立つ。

リンカーンチャップリンの演説もそうだが、20~50語分くらいを書き写すことを続けていると、ごく自然に文章構造の組み立て方や、特に日本人に理解しにくい冠詞(a, the)や前置詞(at, to, on, in, over, of, off)などの使い方が、理屈でなく、感覚的に少しずつわかってくる。

それが他の英文を読むときにも、書くときにも、重要な助けになってくるはずだ。