命と戒律 - 相撲と女人禁制の「伝統」? 伝統という名の権力装置にだまされないようにね
山形県天童市・清池八幡神社の絵馬に描かれる「女大力」。石山平四郎は、女相撲の興行で大成功し、全国を行脚した。昭和31年まであったという。
女性の方は土俵から下りてください !?
えーっと、
これ京都の舞鶴でのできごとでした。
倒れた人のまわりで茫然とする男性たち。
そこに女性が二人駆け寄ってきます。心臓がとまったり呼吸がとまったりすれば、もう、一秒も無駄にできません。
人込みをかき分け、周りに指示し、そして心臓マッサージを始めます。隣にいるスーツ姿の男性に時間をはかってくださいと指示をだしながら。でもあまり男性はその意味がわかっていないようですね。そして、もう一人の女性はすぐに反対側に回りこみ、倒れた人の脈拍をはかっています。脈拍を計算しながら心臓マッサージ、ほんとにすごいです。見本にしたい見事なまでの救急対応ですね。
ところが、そこに場外アナウンスが。
かなり厳しめな口調で「女性の方は土俵から下りてください!」とアナウンスが流されます。場違いなアナウンスに会場はざわつきます。心臓マッサージしてるの、女性たちだよー。土俵から離れたら、誰が救命措置するの?
で、問題になりました。
八角理事長が謝罪 倒れた舞鶴市長へ救命措置の女性に土俵から降りるようアナウンス スポーツ報知 4/5(木) 0:07配信
日本相撲協会の八角理事長(元横綱・北勝海)は4日、京都・舞鶴市での大相撲春巡業中に行司が不適切なアナウンスをしたとして謝罪のコメントを発表した。
「本日、京都府舞鶴市で行われた巡業中、多々見良三・舞鶴市長が倒れられました。市長のご無事を心よりお祈り申し上げます。とっさの応急措置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます。応急措置のさなか、場内アナウンスを担当していた行司が『女性は土俵から降りてください』と複数回アナウンスを行いました。行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くお詫(わ)び申し上げます」。
うわぁ、命より戒律を守るのが大切なファリサイ派のたとえ話みたい。
死んでもいいから戒律を守るべきなの?
2000年も前に、そんなことは間違ってると、ジーザスという男は律法学者に断言しました。戒律を破ってでも、死にかけた旅人のそばにかけよる、それこそが愛だし、戒律より大切な事だと。
大相撲舞鶴場所、舞鶴市長倒れ、救命女性に「女性は土俵から降りて下さい」とアナウンス、ほんとにゆうてる😲
— LoveSophia (@milanochiostro) 2018年4月4日
くだらん戒律より命を大切にすることが大切ってこと、
わかってるひとたちは、どこにだって駆けつける。
そういう人たちの勇気は、
なによりかっこいいと思う。https://t.co/om7Lfo0DvV
穢れの思想 → 塩を撒く
そして、「怪我」や「血」や「病気」、そして「女性」をケガレとみなし、「キヨメ」の塩をまく。
京都府舞鶴市で開かれていた大相撲の春巡業で、土俵上でのあいさつ中に倒れた多々見(たたみ)良三市長(67)を救命中の複数の女性に対し、土俵から降りるよう場内アナウンスがあった問題で、救命行動後に、大量の塩がまかれていたことがわかった。
複数の観客によると、女性を含む救護にあたった人たちが土俵から降りた後、相撲協会関係者が大量に塩をまいていた。
大相撲では、稽古中や本場所の取組中に力士がけがをしたり、体の一部を痛めたりしたようなときに塩をまくことがよくある。日本相撲協会の広報担当は取材に「確認はしていないが、女性が上がったからまいたのではないと思う」と話した。
観客の60代女性は「周りにいる男性がおろおろしている中で、複数の女性がすばやく救命措置をしていたので立派だった」。場内アナウンスについては「女人禁制の伝統があるのだろうが、人命救助にかかわることであり許されない。救助の手を止めていたらどうなっていたことか」と話した。
多々見良三市長(67)はくも膜下出血と診断された。手術を受け、1カ月ほど入院することになった。
世界中で報道される
BBC, CNN, Washington Post, そして New York Times などが報道。
変えることのできることを変える勇気もないのか、高まる批判の声
大相撲宝塚巡業:女性市長あいさつ、土俵下から「悔しい」 - 毎日新聞
京都府舞鶴市の大相撲春巡業で市長が倒れ、救命処置の女性が土俵から下りるよう促された問題に絡み、別の巡業先の兵庫県宝塚市の中川智子市長(70)は6日、土俵上のあいさつが断られたとして「女性という理由で土俵の上でできないのは悔しい。変えるべきは変える勇気が大事」と土俵下からのあいさつで抗議した。
「私は女性市長ですけど、人間です」
宝塚市長の素晴らしいスピーチに場内から大きな拍手がおこりました。
相撲と女人禁制の「伝統」?
女性(出雲阿国)が始めた歌舞伎も、経済力と威信を女性から剥奪し男性だけに占有させた近代。
— LoveSophia (@milanochiostro) 2018年4月4日
女人禁制の醸造も、杜氏はもともと刀自 (女家長 matriarch) だった。
あとからいろんな偽科学的・宗教的理屈をつけるけど、結局は女性から経済力を奪う事が大切だった時代の産物。https://t.co/qBV8hRtvVl
女相撲の歴史について書こうと思ったけど、
今見たら、ちゃんとハッフィントンポストが書いてくれてます。
論文も読んでみましょう。
吉崎祥司; 稲野一彦; 北海道教育大学紀要, 人文科学・社会科学編, 59(1): 71-86 (2008-08)
相撲は,神道との関わりを理由に,土俵上に女性を上げないという姿勢をとっており,それは「伝統」と されている。しかし相撲の歴史をひも解いてみると,女性と相撲は古来より密接な関係を保ってきたことが 明らかになる。宗教・差別・相撲の歴史などの諸側面・諸次元から相撲における「女人禁制の伝統」を批判的に検証することによって,「相撲は神道との関わりがあるから女性を排除する」という論理が,明治期以降に,相撲界による地位向上などの企図にもとづいて虚構されたものであるという帰結が導き出される。こ れは,「性別役割分業」がすぐれて近代的所産(ないし近代における再編強化)であるという社会学あるい は女性(史)学の基本仮説を,文化(スポーツ)領域においても実証するものであろう。
何十年たっても、どれだけ女性が高学歴でがんばっても、日本がジェンダー・スタディーを避け続ける理由、もうそろそろ本気で私たちは検証していってもいいんじゃないでしょうか。