Sophist Almanac

世界について知りたいとき

データの 見方 / 味方 ~ 「調査」や「統計」をどう読むかの5つのチェックポイント

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自民党総裁選がもうすぐです。

 

実質上の

この国の総理を選ぶ、自民党内の中だけでおこなわれる選挙です。

 

そして、今日のニュース。

 

現在の生活に「満足」74.7% 過去最高に、内閣府調査

(TBS系(JNN)) - Yahoo!ニュース 8/24(金) 20:58配信

 今の収入や所得などの暮らしぶりについて「満足している」とする人の割合が過去最も高くなったことが内閣府世論調査でわかりました。

 内閣府が今年6月から7月にかけて18歳以上の男女に対して行った「国民生活に関する世論調査」によりますと、現在の生活に「満足している」と答えた人は74.7%と、去年に比べて0.8ポイント上昇した一方、「不満だ」と答えた人は24.3%と、0.7ポイント減少しました。

 これは調査を開始した1957年以来、最も高い数字で、内閣府は「緩やかな景気回復が続いていることや雇用・所得環境の改善が背景にある」と分析しています。

 また、政府に対する要望としては、「医療・年金等の社会保障の整備」を挙げた人が最も多かったほか、相次ぐ自然災害を受け、「防災」を選んだ人は28.3%と、これまでで過去最高の割合になったことも明らかになっています。(24日17:18) 

   

仕事忙しくてあまりニュースをチェックする時間もないんだけどー。

 

ちょっとこれ気にかかったので、

 

現在の生活に「満足」74.7%  

過去最高って・・・。

 

この何十年、日本で生活してきて、これは違うだろーって思います。

 

よくわからないので調べてみました。

 

だって、

 

ずっと大学見てきてるだけでも、大学生の生活は10年前よりも確実にたいへんだし、教育予算が大幅カットされたせいで大学はもうたいへん。

 

大学の事務のお仕事の多くが契約社員、たくさんの大学教員も5年や3年で解雇しなければならない契約社員に割り振られ、若手の研究者は冷遇され、まっとうな仕事をしてきた図書館員 (司書) のほとんどの人たちが解雇されたり、非正規就業になったり。

 

また、ジェンダーや歴史の研究者に「反日」研究だ、研究費出すな、と、自民党の国会議員さんたちがネットで盛大にバッシング・キャンペーンしている一方で、政府の息がかかった研究室や大学だけが、びっくりするような派手な「イノベーション」宣伝していてびっくりします。

 

すばらしい技術と誠意でいつも私たちの仕事を助けてくださっている印刷専門スタッフの人たちも、下請けの下請けのようにして、安い給料で、職場の片隅に追いやられ、そのくせ大量の仕事を押し付けられているのも、凄く変な話です。(内緒ですが) 文〇省官僚の天下りの人たちは大学でパラダイスしているのに。(← これ書いちゃいけないやつ?)、

 

この給料じゃ、結婚もできない・・・、って、

 

いざ結婚して、子ども産めとかいうから、産んだのに、子ども預けるところない・・・、って。

 

今年もたくさんの災害があって、地震と洪水と、続きましたが、今だって狭い避難所暮らしを余儀なくされている人がたくさんいて、復旧もなかなか進んでいなくて、ボランティアが足りないなんて言ってます。

 

足りないのはそもそもボランティアじゃなくて、復旧にかける資金と政策の問題です。

 

軍事に戦後最高の5兆円の予算を投入しても、内務省消防庁の予算はたった152億円。日本はアメリカのF35戦闘機を40~50機買う約束をしていますが、その戦闘機1機が160億円だから、あのF35戦闘機1機の値段より、日本国民を守る消防庁の予算が少ないというわけで、

 

これで災害復興が万全にできるなら、ほとんど奇跡だと思います。

 

最近は障碍者年金もなかなかもらえなくて、高額の医療費を支払うため、病気の体をかかえて働いている友達もいるし。

 

生活保護うけたら、生活保護受けている家の子どもは、絶対に大学進学しちゃダメという規定になってるし。

 

昔より相当劣化した日本の現代の雇用事情に、例えば、戦後世代を生きてきたうちの両親は、うそでしょ、そんなことがあるわけない、なんて、いつも言います。

 

昨日は、こんな悲しい事件もありました。

 

九大箱崎キャンパス放火・自殺事件~「貧困」という切り口から見えてくるもの(みわよしこ) - Yahoo!ニュース

2018年9月7日、九大・箱崎キャンパスで火災が発生し、元大学院生だった46歳の男性が遺体で発見されました。

男性は、自殺目的で放火したものと見られています。

本記事では、事件を「貧困」という切り口から検証します。

男性の46年の生涯について

 「男性」と呼びつづけるのは、あまりにも気の毒なので、本記事では「Aさん」とします。

 Aさんの過去について、報道されている事実は非常に少なく、アウトラインをつかむのも困難です。しかし、やや詳細に報道されている西日本新聞の9月16日付記事「九大箱崎キャンパス火災 元院生の男性 放火し自殺か 身元判明、福岡東署」から整理すると、Aさんの歩みは、以下のようになります。

  • 2018年9月7日時点で46歳だった→出生は1971年または1972年(本記事では1972年とします)
  • 15歳で自衛隊に入隊(1987年)
  • その後自衛隊を退官し、九大法学部に入学。憲法を専攻
  • 1998年(26歳)、同大学大学院修士課程に入学
  • その後博士課程に進学するも、博士論文は提出せず、2010年に退学(38歳)
  • 2015年(43歳)以後、研究室を一人で使用していたが、夜間のみ。他の院生とは接触していなかった
  • 2017年3月、専門学校等の非常勤職を失う
  • 2017年(45歳) 3月・4月はほぼ無給
  • 同年5月・6月の月給は145000円
  • 同年6月、家賃が払えなくなる。昼間、宅配便の仕分けのバイトを週4回はじめる
  • 同年12月からは、夜間も週4回肉体労働のバイトをはじめる
  • (2017年6月から2018年7月までの間に住居を喪失したとみられる)
  • 2018年(46歳)7月 寝泊まりしていた研究室の移転が開始される
  • 2018年8月「事態が悪化」と親しい人々に記す。大学から研究室退去要請を受ける
  • 2018年9月6日 研究室に放火。遺体で発見される

「15歳で自衛隊に」が意味すること

 Aさんが中学校を卒業したと思われる1987年、高校進学率は93.9%でした。中学校の40人のクラスのうち2人は、少なくともその年には高校進学しなかったことになります。

 中卒での就職の推移に関する資料を探してみましたが、詳細が掲載されている資料は昭和40年代までしか見つけられませんでした。昭和50年代になると、若年労働に関する政府統計などにも、中卒での就職者は「いることはいる」という形でしか現れなくなります。

 1987年、新規高卒に対する有効求人倍率は0.87(政府統計による)。就職を希望する高校生のうち、少なくとも13%は就職できない計算になります。この時期、中卒の求人に関しては、それ以上に厳しい状況だったはず。有力な選択肢は「自衛隊」「病院の看護助手になり准看護師学校に行って資格を取る」のいずれかでしょう。現在なら「介護」も選択肢に入るかもしれませんが、介護保険が発足したのは2000年です。

 いずれにしても、「Aさんが中卒で自衛隊に入隊した」ということからは、高校進学が困難な家庭環境だった可能性、場合によっては社会的養護のもとで育った可能性、しかしながら人物・学力は好ましく評価されていた可能性が考えられます。

大学入学まで

 Aさんが九大法学部に入学した年次は報道されていませんが、何らかの手段で大学受験資格を獲得し、受験したのでしょう。1998年(26歳)で大学院修士課程に進学したということですから、もし学部で留年・休学などがなく、学部卒業から大学院進学までの間にブランクがなかったのなら、1994年(22歳)で大学進学したことになります。

 この間、バブル景気とともに新卒に対する求人が増加しました。高卒に対する有効求人倍率は、1989年に前年の0.9から1.47へと跳ね上がり、増加を続け、1993年には3.08に達します。しかしその後は減少し、1995年には1.35となります。この後、2000年代前半には0.5~0.6程度を推移することになります。

 いずれにしても、Aさんが自衛隊を退官してから大学入学を果たすまでの時期は、中卒でも仕事が探しやすかったと思われます。家出などによって自活の必要に迫られている17歳の少年が、「19歳で高卒」と言い張っても、深く詮索されることなく就職できる時期でもありました。現在の「高認」にあたる「大検」に対する認知は、その5年前・10年前に比べると、好ましいものとして広まっていました。Aさんは、働きながら大検で大学受験資格を取得し、受験勉強に励み、九大法学部への入学を勝ち取ったのではないかと推察されます。

大学生活は? 大学院生活は?

 大学に進学すると、当然ながら学費が必要です。また、学業に励むための生活費も必要です。私が気になるのは、Aさんが学費や生活費をどのように工面していたのかです。

 ここから先は推測にしかなりませんが、学生支援機構(2001年度までは日本育英会奨学金の借り入れは、避けることができなかったでしょう。学業成績は優秀だったようですから、学費は免除されていたのかもしれませんが、学費免除の対象となる学業成績を維持するためには、学修に充てる時間が必要です。すると、アルバイトは最小限にせざるを得ないはず。民間の給付型奨学金は、数年の浪人に相当する年齢から、困難だった可能性が高そうです。すると、学生支援機構奨学金しかありません。

 大学院に進学しても、事情はあまり変わりません。むしろアルバイトをする時間の余裕は、学部時代より少なくなります。学部4年間・修士課程2年間・博士課程3年間、学生支援機構奨学金の貸与を受けていたとすると、合計金額は少なくとも数百万円の桁になります。

 博士課程では、日本学術振興会特別研究員になれば生活費を受けとりながら研究に励むことが可能ですが、当時の年齢制限が「セーフ」でも、通常の院生より高い年齢が好ましく評価されることはなかったでしょう。ちなみに、年齢制限が撤廃されたのは2010年を過ぎてからのことです。

 いずれにしても、学生支援機構奨学金が借りられるのは、標準修業年限の期間だけです。修士2年間、博士3年間が経過した2003年以後は、別の手段で生計を立てる必要があります。つまり「働く」ということですが、必然的に研究の継続は困難になります。

 ともあれ、博士課程に在学していた2010年まで、奨学金の返済は猶予されていたはずです。

博士課程退学後-奨学金の返済は?

 2010年、Aさんが博士課程の学籍を失うと、奨学金の返済が始まったはずです。

 2017年6月、Aさんは月額145000円の収入がありながら、家賃を払えなくなりました。私はここで「あれっ?」と思ったのです。2018年9月現在(10月から引き下げられますが)、46歳の単身者に対する福岡市の生活保護基準は、112720円(うち36000円は住宅扶助)です。近年の福岡市は、地方都市の「住みやすさ」がほぼ感じられない大都市になってしまいましたが、それでも月あたり145000円あれば、単身者用の安めのアパートの家賃が払えなくなることは考えにくいです。もしかすると、同年3月・4月の無給状態のときに水道・電気・ガス・携帯電話などの未納があり、その支払いにお金が消えてしまったのかもしれませんが。

 もしもAさんが、奨学金を返済していたのであれば、「それは、暮らせないでしょう」ということになります。1ヶ月あたり4万円の返済があれば、Aさんの手取り収入が145000円でも、使える生活費は月あたり105000円となり生活保護基準を下回ります。

住宅喪失と悲劇の最期 - そのための生活保護なのに!

 2018年のAさんは、研究室に寝泊まりしていました。おそらく、その前の時点で住居を喪失したのでしょう。しかしその研究室も退去せざるを得なくなり、放火と自殺という結末に至りました。

 Aさんの2017年3月~6月の状況を見ると、Aさんは生活保護の受給資格があったと考えられます。この4ヶ月のうち、収入があったのは5月と6月、月あたり145000円でした。月平均にすれば72500円。生活保護基準をはるかに下回ります。報道されている限り、血縁者を頼れた可能性は、まったく報道されていません。預貯金はほとんどなかったことでしょう。生活保護の受給資格は、少なくともこの4ヶ月間に関していえば、確実にあります。

 その後のAさんは、宅配便の仕分けや肉体労働のバイトで生活を支えていました。しかし、そこまで働いても住宅喪失に至りました。なぜでしょうか? 

 私には「奨学金の返済では?」と思われてなりません。申請すれば、低収入による返済猶予の対象となったはずの状況ですが、あまりにも不安定な生活状況の中にいると、調べ物や手続きが極めて困難になります。低く不安定な収入が人間から知力を奪うことは、数多くの研究で実証されています。

 そして結局は家賃が払えなくなり住宅喪失した成り行きを見ると、奨学金の返済猶予を受けたとしても、生活保護の対象となり得たのではないかと思われます。生活保護の対象となっている期間、奨学金の返済は猶予されます。とりあえず、一息つけます。

 Aさんに、生活保護を受けてほしかった。私は心から、そう思います。

 憲法学を専門としていたAさんが、生存権生活保護を知らないわけはありません。もしかすると、「自分は働けるんだから対象にならないはずだ」と思い込んでいたのかもしれません。あるいは、生活保護で暮らしている人々に対する「自立支援」こと就労指導の熾烈な実態を知っていて、「生活保護になったら研究はおしまい」と思っていたのかもしれません。

 それでも生活保護を受けて、まずは落ち着いた生活を取り戻し(そうさせてくれるかどうかは福岡市と福祉事務所とケースワーカーしだいなのですが……)、バイトしたり、さまざまな能力やスキルを活かせるブラックではない仕事を探したりすること、つまり余暇時間がある職業生活を営むことはできたはずです。余暇時間に何をしようが本人の自由です。研究に打ち込むことに使うこともできます。

 しかし、今から何を言っても、失われた生命は戻りません。

 おそらくは生涯を、貧困のアリ地獄のような状況の中で過ごされ、努力にもかかわらず脱却できないまま亡くなられたAさんのご冥福を、心より祈ります。

 

 

それでも、戦後最高の「幸福」数値 !?

 

バブル絶頂期の時代より !?

 

日本の人たちは

なぜそんなに急に「幸福」になっちゃったの⁉

 

ほんとうに「現在の生活に満足なひとが74.7%で過去最高なんでしょうか。

 

こういう時のチェックは簡単です。

 

( 1 ) いつ

( 2 ) だれが

( 3 ) なんのために

( 4 ) だれに

( 5 ) どんな情報をながすのか

 

チェックしてみましょう。

 

これ、TBS のニュースが放送していますが、こういう統計で一番注意すべきは、誰がどのように統計を取ったのか、という事です。

 

ここには「内閣府」とかいてありますね。

つまり政府が行った調査なんです。

 

政府が行った調査だから「信用できる」というひともいるだろうし、政府が行った調査だから「信用できない」というひともいるでしょう。みなさんはどう思う?

 

そして問題はどのように統計を取ったかです。

 

分母は必ず明らかにしなければ、ちゃんとした統計とは言えませんね。

 

みてみましょう。

 

日本の持ち家率は 61%

 

ここで調査された人たちを調べると、

持ち家の人が81%

一戸建て住宅の人が82%

 

年齢層も高いですね。

 

つまり平日に、アパートや賃貸住宅ではなく、わりといい住宅街のおうちにいる人たちを対象にして調査したのではないか、という感じがします。

 

すくなくとも、昼間お外で遅くまで働いている私は、こんな内閣府の調査には縁遠いです。

 

このデータをグラフに落とし込んでみると、もっといろいろわかると思いますが、

 

でも今日はここまで。

 

一人が幸せでも意味がない。みんなが救われないと意味がないから。

 

宮沢賢治はそういいました。

 

世界がぜんたい幸福にならないうちは

  個人の幸福はあり得ない

    宮沢賢治「農民芸術概論綱要」

 

 

 

言葉を換えれば、これは general welfare = みんなのしあわせ。そしてみんなひとりひとりの pursuit of happinness 幸福の追求

 

それに関わるのが政治です。一部の人だけが豊かになるのは、真の意味での人間の幸せではないんです。

 

 

国民生活に関する世論調査 3 調査票 - 内閣府

平成30年6月

(n=5,969)

 

 グラフの見方も確認しよう。

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