Sophist Almanac

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フェイクニュースはどのように政治に利用されているのか ~ 誤情報と日本学術会議「手入れ」の手法

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Financing Education - Our World in Data

日本政府ってびっくりするぐらい教育や研究に公的資金 (税金) 使わない。それでも日本の教育が総崩れせず、日本の研究がいままでなんとか成果をあげてきたのは、ひとえに教育や研究にかかわっている人たち、親と子、先生や研究者、すべての人たちの努力と情熱と愛情と、そして自腹 (自己負担) のたまものといえますね。

 

 

 

 

菅内閣日本学術会議任命拒否問題で高まる批判

ところが、この政府の軍事研究推進の大きな障壁となっていたのが、軍事研究に加担しない方針の「日本学術会議」。

 

菅内閣はスタートからすぐに、「日本学術会議」の切り崩しを開始します。

 

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それぞれ、研究者や各学会が危機の声をあげ、これは学問への非常に危険な政治介入だと批判の声が強まります。

 

日本学術会議を批判するデマがどっと噴出

菅政権の日本学術会議への人事介入に多くの批判が集まり、支持率まで低下する事態になると、今度は、日本学術会議への根も葉もないデマがどっと押し寄せるようになります。

 

どこがデマ元となっているのか、ひとつひとつその根っこを検証してみると非常に興味深いでしょう。

 

  • 「学術会議で6年働けば、学士院で死ぬまで年金250万円」フジテレビ上席解説委員の平井文夫氏 → 誤り(10月6日
  • 学術会議が「中国の軍事研究に参加」「千人計画に協力」自民・甘利議員やネット言説 → 根拠不明(10月9日
  • 日本学術会議、答申が出ていないため「活動が見えていない」自民・下村幹事長 → ミスリード10月9日
  • アメリカ、イギリスの「学者団体には税金は投入されていない」橋下徹→ 誤り(10月12日
  • 日本学術会議幹部が「北大総長室に押しかけ研究を辞退させた」ネット言説 → 誤り(10月13日
  • 学術会議が「レジ袋有料化を提言」東京新聞を機にしたネット言説 → 誤り(10月13日
  • 学術会議めぐり広がる大量の誤情報、まとめサイトが影響力。政治家やメディアも加担 (10月16日)
  • 売国奴」「スパイ」千人計画でバッシングに。日本人研究者たちが鳴らす警鐘とは? (10月20日)

 

他にもまだまだ探すとあるね。

ネトウヨが拡散した日本学術会議デマ一覧
日本学術会議に入ると年金が貰える → デマ
日本学術会議に入ると学士院に入れる → デマ
日本学術会議は中国の軍事に協力してる → デマ
・会員は年間1人4500万円貰ってる → デマ
日本学術会議は千人計画に参加してる → デマ
・千人計画は中国の軍事研究 → デマ
日本学術会議共産党が支配 → デマ
日本学術会議の経費は国会がチェックできない → デマ
日本学術会議の候補6名の論文はスコーパスで出てこないから無能 → デマ
日本学術会議はレジ袋有料化等どうでもいいことしかやってない  → デマ
・海外のアカデミーは公金が使われてない → デマ
日本学術会議が北大に押し掛けて研究妨害をした → デマ
日本学術会議は2007年を最後に答申を拒否してる → デマ

保守言論人と自民党議員、もはや滅茶苦茶。学術会議に関する大量のデマを飛ばしまくる : なんJ政治ネタまとめ

 

デマ後、政府が日本学術会議の機構そのものを「見直し」宣言 

どっと洪水のように各所からあふれ出た誤情報。

それで行政改革大臣が「聖域なく」学術会議を「見直し」と宣言。

 

いや、今見直すべきなのは、日本学術会議のほうではなく、誤情報の出所と、政府の介入は重大な憲法違反だということのほうでは !??????

 

あのさ、それでも学術会議が大したことしてない、って主張するなら ⇩ 学問の自由を尊重し、永遠に学術会議を放置してほしいと思います。学問の自由は憲法で保障された自由です。

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有馬好き on Twitter

 

この順番で「狙っていた」ってのは、この河野「行政改革大臣」のドヤ的な登場の仕方からもうかがえますね。

 

批判されていたはずの、日本学術会議6名の任命拒否という政治介入が、なぜか、いつのまにか、今度は堂々と日本学術会議の「予算と機構」そのものの手入れに「着手」‼に変わっています。

 

 

どうして !?

どの地点から、この流れにもちこみました !?

 

そう。

 

政府への批判が高まった直後から、大量に流されたデマと誤情報が日本学術会議批判を醸造し、そのデマに便乗する形で、政権は日本学術会議という組織そのものの「手入れ」を可能にさせようとしているのです。

 

このようにデマを流し、むりやり政治の流れを変えるやり方は、ポピュリズムの典型的な手法ですが、

 

問題は、日本学術会議に関するデマを拡散し煽ったのは、一部の政治家とフジテレビ平井文夫氏など一部のジャーナリスト、そして「ネトウヨ」言論人の定番の方々であり、さほど、誤情報をもととした日本学術会議批判は浸透していないかに思えます。

 

それでも、デマ情報をテコにして、強引に日本学術会議への「手入れ」に「着手」するという、今の日本の政治の在り方に対して、国民のあいだから大きな反対もでないまま、あいかわらず支持率が高いのは、

 

社会保障や人権の問題だけではなく、自分たちの教育や労働環境に関しても「政治的無関心」が呪いのように頭からはなれないせいなのかもしれません。

 

研究は、衣食住から政治経済、科学から宗教、教育から企業、すべての人間の生活の分野に栄養を送りこむ葉脈のようなものです。日本学術会議なんて聞いたことないから、知らね、で済まない事態が、いま、おこっているのです。

 

 

 

日本の「学問の自立性」

日本学術会議は、過去、大学と科学者が戦争に大きく加担したことへの反省から、戦後の発足当初から、戦争を目的とした研究は行わない方針を明らかにし、その姿勢を貫いてきた。

 

日本の研究に投入される国費がどんどんと削られ、研究機関がひっ迫する中、

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OECD、2020年版「図表でみる教育」を発行:教育とICT Online

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4.高等教育財政:文部科学省

 

防衛装備庁開設 - 武器ビジネスと軍事研究の今

一方、防衛予算は増え続け、

ついに日本の武器ビジネス参入が可能に

2014年、閣議決定で「武器輸出三原則」の見直し
平成26年 (註 2014年) 4月1日、第二次安倍内閣国家安全保障会議及び閣議において、武器輸出三原則等に代わる新原則として「防衛装備移転三原則」を決定し、①平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合、②我が国の国家安全保障に資する場合に限り、防衛装備の海外移転を可能とした。また、新三原則の下で「防衛生産・技術基盤戦略」を決定し、国内で全ての防衛生産・技術基盤を保持することを基本とする従来の方針から、一部、国際共同開発・共同生産を認める方針へと転換した。

「武器輸出三原則等 」の見直しと新たな「防衛装備移転三原則」外交防衛委員会調査室 沓脱 和人

 

2015年、閣議決定で防衛装備庁開設

前年の閣議決定を受け、防衛装備品 (武器) の調達や輸出を一元管理する「防衛装備庁」が新設され、武器の輸出に向けた体制を強化する防衛省設置法改正案を閣議決定

 

軍事研究のススメ

同時に「安全保障技術研究推進制度」を導入

防衛装備庁が将来的に武器など防衛装備品に利用できる基礎研究を公募し、大学などへ多額の助成金を出すと決定。

 半面、軍事研究費はうなぎ上りだ。防衛装備庁は15年に「安全保障技術研究推進制度」を導入。将来的に武器転用可能な基礎研究を公募し、最長3年、計9000万円を助成する仕組みで、予算は初年度の3億円が翌16年度には6億円に倍増。17年度はナント、110億円と約18倍に膨張し、今年度も108億円と高止まりのままだ。

学術会議予算は目の敵なのに…軍事研究費は「18倍増」高止まりの愚 (2020年10月17日) - エキサイトニュース

 

ここまでほぼ重大なことが内閣の決定 (閣議決定) できまっていく不思議。内閣支持率高いとなんでも閣議決定できるという利点があるようです。