Sophists' Almanac

世界について知りたいとき

国費 100億円以上かけて開発された SPEEDI (緊急時迅速放射能予測ネットワークシステム) は国民のためにあるのではない。

 

SPEEDI - 今回は、やけに speedy だな。

北朝鮮核実験が拡散する (かもしれない) 放射能には、即日のうちに SPEEDI (緊急時迅速放射能予測ネットワークシステム) からの情報が報道される。

 

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カフカの小説なみに不条理な事ばかりがまかりとおる、この健忘症な安楽国で、国民の「どれだけ執念深く覚えていられるか」という意思こそが、この国で最も必要なものだと、近年、私は事々に思うようになった。だから、これを書き留めておく。

 

私たちは覚えているだろうか。

 

あの年の SPEEDI のことを。

 

SPEEDI は国費 100億円以上かけて開発され、 2000年度予算だけで7億8000万円が 計上されている。

 

福島第一原発事故直後3月11日の夜 ( ! ) から、5,000枚以上の試算結果があったとされるが、「国民の無用な混乱を招くだけ」と判断されて公開されず、自治体が住民避難を計画する参考にも供されなかった。

 

今見るとわかる。例えば飯館村の高線量放射性汚染など、ものの見事に予測しきれているにも関わらず、だ。

 

国民に SPEEDI のデータが公開されたのは 5月になってからのことだった。これだけの税金を大量に投入したデータが国民の健康 (public health) の為には、一切使われることがなかった。

 

例えば飯館村の位置を確認してもらいたい。このデータが葬られたことが、どれだけの国家的な犯罪だったかは一目瞭然だろう。

 

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しかも、文部科学省は、国民の血税でつくられたはずの SPEEDI「命のデータ」を、

 

国民ではなく、なんと、いち早く外務省を通し、3月14日に米軍に提供していた、

 

ということも忘れてはならない。

 

実は、これで納得できることがある。

 

アメリカ議会、事故後5日後の3月16日の証言を引用しよう。

 

「我々は部分的炉心溶解 (partial meltdown) があると考えている。しかし、あなた方がおっしゃるように、それは必ずしも格納容器が完全崩落するという意味ではないが。」

 

このアメリカ議会での提言に対して、日本政府は「メルトダウンはぜったいにない」と宣言し、メディアもそれに呼応するかのように、「メルトダウンという言葉を使うな」と、逆切れ的な怒りをあらわにし、根拠なきデマゴーグだと繰り返し報道した。アメリカが何を言うか ! すさまじい勢いだったのを覚えている。

 

しかし、米国議会での証言を侮ってはいけない。この証言者こそは、オバマ政権のエネルギー省長官スティーブン・チュウ (Steven Chu) その人である。中国系アメリカ人の高名な原子物理学者。専門はまさに核分裂時の冷却や制御の研究で、それでノーベル物理学賞を受賞 (1997) している。

 

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そもそも、なぜこんな高名な原子炉研究の学者が、エネルギー省長官を務めているのか…、というのも、無知なお人形状態でつぎつぎに大臣の席に腰掛け、官僚お任せの内閣が常識となっている日本の状況からすると、信じられないほどうらやましいばかりなのだが、そこには、もう一つの大きな理由があった。

 

共和党の前ブッシュ大統領は、産業界との利権構造もあってか、「地球温暖化」そのものを否定し続け( ゚Д゚)、ついに最高裁 (Bush v. EPA, 2007) で敗訴してやっと温暖化を認めざるおえなかったぐらいなので、温暖化対策はほとんど手をつけなかった。

 

そのブッシュに対抗し、実は、当時のオバマはエネルギー政策の公約として、スリーマイル島原発事故 (1979) 以後、一基も増設していない ( ! ) アメリカの原子力発電を、再び見直して原発推進をかかげていた。だからオバマ政権において、チュウはまさにアメリカの原発再始動の右腕となるべき人だったのだ。

 

しかし、そんなときにフクシマがおこる。

 

その後のオバマは、原発政策再開を一度も口にだすことはなかった。常識的に考えて、それほどの事故だったのだ、フクシマは。

 

もう一度整理してみよう。

 

日本の何百億単位の国民の税金が投入された SPEEDI のデータは、

日本の国民にではなく、speedy に米軍に渡され、米国政府のもとにとどけられた

 

その SPEEDI のデータを基にして、原子力研究者のチュウ長官が speedy に算出した結果がこの 3/16 の議会証言。事故後5日目のことだ。

つまり、だ。

 

日本の SPEEDI のデータは外務省から米軍へ、そして米国エネルギー省にわたり、事故後5日後には米国議会で生かされていく。

 

在日アメリカ人の退避策やオバマのエネルギー政策そのものの見直しにすら生かされていった。

 

一方で日本はどうだ?

 

日本のメルトダウン宣言はいつだった? 日本のエネルギー政策は見直されたか? フクシマの経験は一つでも顧みられたか?

 

市民の反対をよそに、原発再稼働は今も「粛々と」続けられている。

 

2014年には、更に驚きニュースが伝えられた。SPEEDI のデータは、「原発事故時には使用しない」という原則が原子力規制委員会からだされた。

 

意味が分からない。多額の国民の税金でつくられた放射能拡散予測計測システムは、どうやら、国民のパブリック・ヘルスのためにあるのではないらしい。

 

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では、何のためにあるのか。

 

今回で明白となっただろう。

SPEEDI は国民のためにあるのではない。


核の戦争と核戦略 のために存在するのだということが。

 

日本政府と SPEEDI は私たちを放射能から守る気など一つもない。それだけは忘れないで覚えておこう。

 

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