MeToo ( 1 ) ~ 詩織さん事件から考える日本のジェンダー
Saying #MeToo in Japan – POLITICO ワシントンのメディア『ポリティコ』は良質な記事が多い。
今日は、日本でレイプを訴えた一人の女性についてです。
実は、このことをブログにしなかったのは、忙しいという事もあるけど、ひとつには、性犯罪で声をあげた女性がどれだけひどい状況に追いつめられていくのか、という醜悪で陰湿な日本の現実は、日本の若者たちにとって、ポジティヴではなく、どれほどネガティヴな影響を及ぼすのだろうかという鬱々とした思いがあった。この恐ろしい日本の現実は、若い世代の女性たちにとって、地獄の脅迫案件となるのではないかと、そんなリアルな恐怖すら感じる、おぞましい現状が背景にあだったから、なんです。
で、若い人たちはどう思うのだろうか?
詩織さんの事件のことをみんなが知れば、日本の女性たちはますます性被害を訴えることができなくなるほど脅かされるのだろうか、
それとも、若い世代が、この勇気ある女性から、勇気をもって訴えることの大切さを学ぶことができるか、
どうなんだろう。
私にはまだ確信がありません。
それでも 知的で勇気ある詩織さんは、今、日本の若者たちに大きな勇気を与えてくれていると、私は信じるからです。
今、大学の現場で、伊藤詩織さんについて名前を知っているという学生さんはほとんどいません。この何年にもわたってそうだったし、今からもそうなのかもしれません。
授業でジェンダーのことを語ろうにも、伊藤詩織さんの事件や #MeToo ハッシュタグのことも知らないという学生さんが多く、ほとんど日本で報道されてないし、日本はいつまでたってもジェンダーと性犯罪を low profile (目立たない) ようにさせてタブーにさせておいたままで、そんなことでは、ジェンダーを学び考えることもできない。
なによりも、女性差別やセクシャルハラスメントや痴漢や性暴力は、この日本にもいっぱい蔓延していて、そんなつらい経験をしたことないひとはいないくらいなのだから、もっと私たちがちゃんとジェンダーのことに真剣に取り組まなきゃとおもうからです。
まずは今、何が起こっているのか、知ることから。
バックラッシュが私をひどく打ちのめした。私はソーシャルメディアで揶揄され、知らない人たちからヘイトメッセージやメールや電話を受け取った。私は「ふしだら女」で「売春婦」だと呼ばれ、そして死ぬべきだと呼ばれた。また私の国籍について議論された。というのも本当の日本人女性ならそんな「恥ずかしい」ことを語ったりはしないだろうということだった。私の家族との写真を添えられた私の私生活についてのフェイクの話がネットに登場した。女性たちから、なんで自分自身を守らないのかと私を批判するメッセージを送られた。
CNN が伝える #詩織さん
無視され、尊厳を傷つけられ・・・、いかに日本が性的暴力のサバイバーをないがしろにしてきたかということを非難されているか。
Ignored, humiliated: How #Japan is accused of failing survivors of #sexualabuse. @annastewartcnn and @emckirdy report: https://t.co/IwQzhzyheq pic.twitter.com/M1oarJZ1NQ
— CNN Asia Pacific (@cnnasiapr) 2018年4月23日
ネットで彼女がいかにひどい中傷を受けつづけてきたか、本名をさらされ、家族までその脅威が及んだこと、そして外国人記者クラブで記者会見が開かれても、ほとんど日本のメディアに取り上げられることはなかった。
なぜなのだろう。
彼女に性的暴行をしたとされる男は、当時、TBSワシントン支局長だった山口敬之。安倍総理大臣の自伝を書き、安倍総理に最も近いメディア人だった。
そして、これはとても記憶に鮮烈に残っているけど、
選挙の投開票日にはすべての選挙関連の広告や SNS の投稿まで禁止されています。SNS でも、これはみんながとても気をつけている事項なのですが、朝起きてびっくり。なんとそんな中、2016年7月10日の参院選当日にあわせてこの広告が新聞ジャック。これ、ほんとすごいよね。本の広告なら公職選挙法に抵触しないのか公職選挙法にぎりぎり引っかからないという根拠を教えてほしい。
この「満を持して」出版された安倍総理本を書いたジャーナリストが、問題となっているその人でした。
そして、山口敬之をガードするスクラムががっちりと組まれる。産経新聞、ならびに保守系冊子のジャーナリストの面々。
詩織さんは、私と同じように、かなりお酒に強い女性だったといわれています。お酒モラルの厳しいアメリカでの海外留学生活も長く、お酒で意識がなくなるまで飲む、失敗するなんてことはありません。というのも、お酒に強い人は相当飲んでも意識がなくなったりはしないからです。ところがこの時は、たくさん飲んでもいないのに意識がなくなりました。
これはレイプ・ドラッグ犯罪ではないかといわれています。
ほんとに悲しい話ですが、こういう最も卑劣で汚らしい犯罪者がいるということも、わかって生活していかないといけない。だって、いつ、だれが、被害者になるか、わからないからです。
誰が被害にあうかわかりません。そして、こんな心の強い詩織さんですら、警察に出向いたのは五日後のことでした。ほんとうに勇気がいるんです。でもね、いいですか、なんでもいいから、尿だけは取っておきましょう。どんな容器でもいいから、とりあえず、尿をとっておく。
そして、もう一つ大切なポイントは、ドラッグで意識を失わされたのか、それとも、お酒で本当に意識がなくなるまで飲んでしまったのか、そうだとしても、それで性暴力に関しては、まったく関係ありません。レイプされても、お酒や病気や事故で意識がなくなった方が悪い、なんて考える人たちは、卑劣で愚かで倫理的な基準にすら立たない人たちです。関係ないのです。意識のない人間をレイプすることは、人間の行為の中で、もっとも卑劣で腐りきった人間のやることです。
しかし、今の日本の法律では、意識のない人間をレイプすることを「準強姦」といい「強姦」より「準」がついているわけです。つまりなんか、罪が軽い印象を受けますよね。
意識がない人間をレイプすることは、罪が少しでも軽くなるのでしょうか。とんでもない ! 合意なき性行為をレイプといいます。準強姦などという概念そのものがそのものです。それこそが110年間も改正されていない日本の遅れた性犯罪の法律の現状を表しています。
とりあえず、Politico の記事の日本語訳が途中まで読めます。完全版は Politico から読んでみましょう。
私、伊藤詩織が実名でレイプ被害を公表した理由|司法と政治の「ブラックボックス」をあばく
2017年、ひとりの女性が日本社会、司法、政治に大きな疑問符を投げかけた。大物ジャーナリストからレイプされ、刑事告発するが不自然な経緯で不起訴となったため、伊藤詩織と実名を公表し、日本の性犯罪をめぐる「ブラックボックス」の実態を明るみに出した。現在は民事訴訟中だ。
伊藤の行動は、世界の#MeToo運動とも共鳴し、各国メディアから注目された。本記事は、2018年1月に伊藤自らが「ポリティコ」ヨーロッパ版に寄稿した英文の邦訳である。
レイプ被害を公表するしかなかった
2017年5月下旬、私、伊藤詩織は、東京地裁の司法記者クラブで記者会見を開き、自分のレイプ被害を公表した。
日本では、女性がレイプ被害を公表するなんて考えられないことだ。でも自分がとくべつ勇敢だったとは思わない。それしか選択肢がなかった。
2015年4月4日の早朝、気が付くと私は東京のホテルの一室にいて、当時、TBSワシントン支局長だった山口敬之にレイプされていた。山口は安倍晋三首相と親しい関係にあるジャーナリストだ。
前の晩、私は就職の相談をするために山口に会った。その晩の記憶は、鮨屋で気分が悪くなり気を失ったところで途絶えている。私は刑事告発する決意をした。
手続きを進めるうちに、日本がいかに性的被害者をないがしろにするシステムであるかを思い知ることになった。
捜査は、始めから終わりまで被害者を引きずり下ろそうとするものであることを知った。政治的圧力も一因だとは思うが、医学・犯罪捜査・法律、すべての分野で性犯罪は過小評価され、被害者が見捨てられるようにできている。
日本の社会そのものがそういう仕組みになっている。そう思ったのは私だけではなかった。私は、こうした障壁のひとつひとつと闘わねばならなくなった。
事件は書類送検されたが、検察の判断で不起訴処分となった。私は検察審査会に不服申し立てをした。記者会見を開いたのはその報告のためだ。その不服申し立ても17年9月に「不起訴相当」とされた。
公表に踏み切ったのは、性的犯罪に関するシステム全体を変えねばならないと伝えたかったからだ。また当時、強姦罪の厳罰化を含む刑法改正が提案されており、審議を遅らせることのないよう、国会議員に訴えることも目的だった。
強姦罪は110年間も改正されていない旧態依然の法律だった。私たちは現実に起きている性暴力について、もっと話し合うべきだと言いたかった。
医療関係者や警察に性暴力への理解がほとんどないこと、サバイバーへの適切なサポートが不足しているという問題に私は直面した。
レイプされてホテルを逃げ出した後、身体のあちこちに痛みを感じた。そのとき初めて自分の身に起きたことを把握した。
「セカンドレイプ」のような捜査
訪ねた婦人科はほとんど助けにならなかった。東京にひとつだけある24時間対応のホットラインに電話し、病院の紹介を頼んだ(47都道府県のうち、「レイプキット」と呼ばれる証拠保全のための道具一式を備えている自治体は14しかない)。
しかしホットラインは、面接するまで情報提供はできないと言うのだ。そこに出かけていく気力も体力も残っていなかった。
警察に行ったのは、事件から5日も経ってからだ。怖かった。しかし私はジャーナリストという職業を選んだのだから、真実を隠すことはできないと思った。
捜査員は当初、「経歴に傷がつく」とか「よくある話だから捜査は難しい」と言って、被害届の提出を思いとどまらせようとした。
「ホテルには防犯カメラがあるはずだからそれを見てください」と私は捜査員を説得した。
タクシー運転手は、ぐったりした私がホテルに運び込まれていったと証言してくれた。それでようやく警察も重い腰を上げたのだ。
私は多くの捜査関係者に何度も同じ説明をしなければならなかった。「泣くとかしてくれないと、伝わらない。被害者なら被害者らしくしないとね」と言う捜査員もいた。
捜査員が見守るなか、等身大の人形を使って事件を再現し、捜査員が写真を撮るということもした。これは屈辱的で忘れることにできない経験となった。このようなトラウマチックな捜査を私の元同僚は「セカンドレイプ」と呼んだ。
伊藤詩織『Black Box』(文藝春秋社)はこの一連の経験を克明に描いている
高輪署は2015年6月初め、準強姦罪容疑で山口の逮捕令状を取得した。準強姦罪(現在は準強制性交等罪)は、意識がないなどで抵抗できない被害者を強姦する罪だ。
逮捕予定日は6月8日、場所は成田空港だった。しかし逮捕直前になって、当時の警視庁刑事部長の指示により逮捕は取りやめになった。きわめて異例なケースだ。
私の事件は警視庁捜査一課に送致され、そこでは示談するように言われた。
2016年7月、東京地検は山口を証拠不十分で不起訴処分にした。
山口の逮捕が停止されたことを知った私は、最後の手段としてメディアで公表するしかないと思った。信頼できるジャーナリストにも相談した。
だが取り上げてくれたのは「週刊新潮」だけで、他のメディアは続かなかった。記事は17年5月に掲載された。
政治がらみの事件であることは確かだ。しかし日本のメディアはもともと性犯罪について沈黙するのがならわしで、それらは「存在しないこと」なのだ。
「強姦」という言葉もタブーとされ、被害者が未成年の場合は「暴行」や「いたずらをされた」などの表現に言い換えられる。これが、この問題が世に知られない要因になっている。「だからレイプされたんだ」
東京地裁での記者会見は広く報道され、世の中に衝撃を与えた。同時に私に対するバッシングも激しくなった。SNSでの中傷、ヘイトメッセージが殺到し、メールや非通知の電話でも非難された。「淫売」「娼婦」「死ね」などと言われた。
国籍についてもいろいろな噂をたてられた。日本人女性ならこんな「恥ずかしいこと」は話さないというのだ。ネット上では捏造された私のプライバシーが拡散され、家族の写真も出回った。自衛を怠った私が悪いと責める女性もいた。
大手メディアは私の服装を問題視した。SNSでは、シャツのボタンを開けすぎだ、そんな人間は信用できない、だからレイプされたんだとまで言われた。記者会見でスーツを着るようにアドバイスをくれたジャーナリストもいたが、私は着なかった。
被害者らしい服装をしろ、被害者らしくふるまえというアドバイスはもうたくさんだった。
会見後、外出を避けるようになった。外に出るときはメガネと帽子で変装したが、たいていは見破られ、写真を撮られた。
支えてくれたのは親しい人たちだった。性的暴行を受けたことを言えずにいる女性たちが感謝の手紙をくれ、その言葉に励まされた。
レイプに対する偏見
私が育ったのは、女性が幼いうちからセクシズムとハラスメントにさらされる社会だ。
10歳のころ、東京の遊園地のプールで男性に触られたことがある。一緒にいた友達のお母さんは、「そんな可愛いビキニを着てるからだよ」と言った。電車内の痴漢行為がたいしたことではないとされるのも日常茶飯事だ。
高校生のとき、私も友人も毎日のように痴漢に遭った。
被害を受けた女性が声を上げると社会的汚名をきせられる。そんな目に遭うのはそういう女だからだと言われる。これが、被害者が沈黙する原因となっている。警察に被害届を出す被害者は全体の4%にすぎない。しかも容疑者が逮捕されてもほとんどは起訴されない。
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遠慮も忖度もないど真ん中タイトル来ました。
— 長坂道子MichikoNagasaka (@fairytaleselect) 2019年12月20日
この数単語の中に、性暴力、パワハラ、政治との癒着、被害者が声を上げること、といったイシューたちが詰め込まれています。
Abe’s biographer raped junior colleague Shiori Ito in Japan’s #MeToo case | World | The Times https://t.co/njt2aB64s4
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