汚染と米軍基地と日本政府
米軍基地はどれだけ沖縄にあるのかな・・・!?
たれ流す米軍、検査しない日本政府
「子どもたちが飲んできた水にまさか」沖縄の水道水から有害な有機フッ素化合物…米軍基地の調査は? 求められる汚染源の特定
平良いずみ
2021年10月25日 月曜 午後0:00
「処理したから安全」と公共の下水道へ放出2016年、沖縄県は突如、県民45万人に供給されている水道水に発がん性が指摘される有機フッ素化合物「PFAS」が含まれていたと発表。それは、国際条約で製造・使用が禁止された化学物質だった。
汚染源は米軍基地だとみられているが、5年経った今なお、日米地位協定が壁となり基地内への立ち入り調査すら行われていない。
目に見えない汚染物質に県民が不安を募らせる中、2021年8月26日、アメリカ軍は日米で協議中に宜野湾市・普天間基地からPFOS・PFOA(総称してPFAS)を含む汚染水を「処理したから安全」として公共の下水道へ放出。
自然界でのPFASの分解には数千年かかるとされ、“永遠の化学物質“と呼ばれる物質が最終的には沖縄の海に流された。
さらに9月、防衛省は普天間基地で保管されていた汚染水を日本側で引き取り処分することを決めた。私たちの1億円近い税金を投入して…。自分の住む土地に汚染物質を流されたら、あなたは黙っていられるだろうか。
防衛省は10月7日までに、普天間基地に保管されていた有機フッ素化合物「PFAS」を含む汚染水、約36万リットルを引き取る作業を終了したとしている。しかし、この間、防衛省は事実の解明に不可欠な汚染の濃度の検査を行っておらず批判の声があがっている。
防衛省は濃度検査せず「税金投入ならば説明を」
8月26日、米軍はPFASを含む汚染水を公共の下水道へ放出。その際、1リットル当たり2.7ナノグラム以下に処理したとして安全性を強調するも、宜野湾市の調査では下水から670ナノグラムが検出された。これは国の指針値の約13倍にあたる。
事実の解明には、濃度の検査を行うことが不可欠だが、防衛省は沖縄テレビの取材に対し「米軍から情報を得ている」として、独自の検査を行っていないことがわかっている。
この対応について、防衛省に調査や情報の速やかな公開などを求めてきた、子育てをする女性は…
水の安全を求めるママたちの会 山本藍代表:
事実をまず把握して、そのためにはもちろん数値も測らないといけないでしょうし、誰に頼ったらいいんですかという気持ちですね。どうしたらいいんだろう、という気持ちですけれど、求めていくしかないですかね。ここで生活している人間としては
防衛省は約9200万円の税金を投入し、米軍から引き取った汚染水、ドラム缶にして2100本分を県外の業者に送り処理する。多額の税金が投入されるからには国民に十分な説明がなされるべきだと、沖縄大学の桜井国俊名誉教授は指摘する。
沖縄大学 桜井国俊名誉教授:
当然のことながらサンプルをとって、この濃度なら業者は幾らで処理しますよ、という見積が出て。「このような廃棄物だったので幾らでやってもらうことにしました」ということで、初めて国民への説明責任が果たせるわけです
さらに、今回の防衛省の対応について桜井名誉教授は、環境問題が起きた際の汚染者負担の原則に反したもので“悪しき先例”になると批判した。
沖縄大学 桜井国俊名誉教授:
基地を返す前なのに日本政府が尻拭いをするという、とんでもない先例が生まれたんです
泡消火剤であふれる普天間基地、湧水からは高濃度を検出
これは、沖縄テレビが米情報公開法で入手した写真。
2020年4月、基地の外にも泡が流れ出し、県民を不安に陥れた事故の際の普天間基地内を捉えたものだ。一面、大量の白い泡で覆われている。
米情報公開法で入手
泡消火剤が排水溝に流れこまないよう、海兵隊員が資材でせき止めようとしている様子がわかる。この事故の原因は兵士たちのバーベキューだった。
今回入手した報告書からは、普天間基地内で2019年から2020年まで4件の流出事故が起きていたにもかかわらず、そのうちの2件しか日本側に通知されていないことがわかった。
基地内で一体、何が起きているのか…。汚染源の特定が不可欠だが、日米地位協定が壁となり調査は行われないままだ。
平良いずみアナウンサー:
普天間基地内での立ち入り調査が行えない中、汚染源を特定するにはより詳細なデータが必要として、県はこれまでに高濃度の値が検出されている宜野湾市の喜友名泉(チュンナガー)をはじめ6カ所で毎月、水質調査を実施します
水質調査の現場を取材する平良いずみアナウンサー
2020年度まで年に2回行われてきた調査。宜野湾市の喜友名泉では、1リットル当たり1600ナノグラム、1100ナノグラムと国の暫定指針値をはるかに上回るPFOSとPFOAが検出されている。
また、メンダカリヒーガーでは670ナノグラム、1100ナノグラムなどとなっている。こうした湧水から高濃度の値が検出されることは、何を意味しているのか。
京都大学 環境衛生学 原田浩二准教授:
PFOS、PFOAは少しずつ土壌にしみ込む。ずっと過去から使われてきたものを表していると考えている
汚染源の特定ができない状況で今回、日本側が引き取った汚染水の検査を行うことは事実の解明には不可欠。桜井名誉教授の指摘にもあったように多額の税金が投入される以上、防衛省は説明責任を果たすことが求められている。
【編集後記】
“永遠の化学物質“と呼ばれるPFASは、発がん性のみならず、赤ちゃんや子どもの成長に悪影響を与えるという研究結果が、次々と明らかになっています。私自身、6歳の息子を育てる母親のひとりとして、不安でたまらないというのが正直な気持ちです。
息子が乳幼児だった時は、問題の発覚前。粉ミルクを作る際に水道水を煮沸して飲ませてきました。ミネラルウォーターに含まれるマグネシウムなどのミネラル成分が、赤ちゃんの胃や腎臓などに負担をかけてしまうとされているからです。その後、突き付けられたのは、子どもに飲ませていた水に汚染物質が含まれていたという事実。何とか何とかしなければ、その一心で取材を続けています。
現在、汚染が発覚した北谷浄水場から供給される水に含まれるPFOSとPFOAの値は、厚生労働省の暫定目標値である1リットル当たり50ナノグラムを下回っています。ただ、国内のPFAS研究の第一人者である京都大学・医学研究科の小泉昭夫名誉教授は「胎児・子どもへの影響を考えると、10ナノグラム以下が望ましい」としています。
「子どもたちを守りたい」。いま沖縄の母親たちが勇気を振り絞り、声をあげています。その慟哭にも近い声を全国に届け、現状を変えていくのが私の仕事。そう自分を奮い立たせて、きょうも現場に向かいます。
最後に、この問題は決して沖縄だけの問題ではなく、全国の在日米軍基地で起きているということを追記して、ペンを置きます。
(沖縄テレビ アナウンサー 平良いずみ)
PFOS を薄めて流すなんて、アメリカでは絶対にありえないこと。アメリカでは絶対にやらない事も、沖縄では平気でやっちゃうんですか。本当にびっくりします。そして、それを可能にさせているのが、日本政府です。
垂れ流しが問題となり、残りの一部は日本側で引き取って一千万円の税金を投入して処理するけれど、その際の「濃度検査もせず」とか、そもそも濃度検査しないで業者が処理などできないのだから、もうこれは、常識で考えて濃度の隠蔽でしかありえません。つまり米軍のために、隠蔽までして尽力です。
在沖米軍と日本政府はどれだけこういうことを沖縄で繰り返してきたのでしょうか。
沖縄の海へ流すというなら、流せるというなら、アメリカに持ち帰ってフロリダの海にでも流してください !
片付けない米軍基地
次の琉球朝日放送の記者さんの記事もわかりやすい。
こういうまとめ記事は大切だと思います。
旧米軍用地の原状回復に注がれた日本の129億円 ~ 日米地位協定の歪みを映す沖縄の現実。これは汚染処理や建物撤去に使われた氷山の一角
島袋夏子 琉球朝日放送記者
2018年11月18日
拡大米軍嘉手納基地修理工場で公開された米本国へ運ぶため整備中の「メースB」=1969年12月29日、嘉手納基地内の修理工場
米軍が沖縄に設置した中距離弾道ミサイル基地
5年前のことだ。その日は激しい雨が降っていた。滝のような水が、赤土を押し流し、私の足元を汚していた。
沖縄県北部、金武町にあるアメリカ軍ギンバル訓練場。眼下には、かつてのミサイル基地が広がっていた。
冷戦時代、アメリカ軍は中国への核抑止力として、沖縄県内4カ所に核弾頭搭載可能な中距離弾道ミサイル「メースB」基地を配備した。半世紀を経て、最後の一カ所が沖縄防衛局によって撤去されると聞き、1年交渉して、中に入れてもらった。
地表からは、黒くて分厚い鉄筋コンクリートの残骸が不気味な姿を晒していた。上物は復帰前に米軍が撤去したが、地下11メートルにも及ぶ構造物は、この土地が返還された2011年時点でも埋められたままだった。
金武町ギンバル訓練場で「中距離弾道ミサイルメースB基地」が撤去された=2013年5月(提供:琉球朝日放送)
時代が目まぐるしく変わる中、訓練場の一角に取り残された「冷戦時代の遺物」。それは沖縄の戦後史を見てきた証言者と言えるだろう。
だが私の関心は、過去の歴史ではなかった。
原状回復に日本の税金から129億円
アメリカ軍が使った返還地を訪ね、それらの土地から沖縄の「今」を考えるというのが、私のライフワークになっている。
これまでの取材で、軍隊が使った土地のほとんどで大量のゴミが出てきたり、有害物質による汚染が発覚したりしていることが分かった。それは、沖縄の人たちが押し付けられている「負担」を物語っている(「米軍から “汚染された土地” が還ってくる!参照)。
今年8月、その負担の大きさを示す資料が手に入った。軍用地返還の際に、ゴミや構造物を撤去したり、有害物質で汚染された土を取り除いたりするのにかかった「原状回復費」を巡る資料だ。
「原状回復費」と言えば、沖縄返還交渉の際、毎日新聞記者の西山太吉がスクープした密約の一つでもあった。それは沖縄返還前、日本政府が返還軍用地の原状回復費約400万ドルを肩代わりする密約を結んでいたというものだった。ご存知の方も多いと思うが、西山のスクープは、後に外務省女性事務官とのスキャンダルにすり替えられ、長く本質が議論されることはなかった。
今回明らかになった原状回復費は、約128億7100万円。1972年の沖縄本土復帰以降、日本政府が負担してきた「カネ」だ。
アメリカ軍に接収された土地が返ってくることは悲願だ。だが、取り戻した土地を使えるようにするため、日本政府が国民の税金を湯水のように注いでいることはあまり知られていない。
長く「原状回復費」の議論が封印されてきたことが、今の沖縄に、この国に、大きな影を落としている。
米国の原状回復義務を免除する日米地位協定第4条1項
沖縄防衛局によると、1972年以降、沖縄では351回に分けてアメリカ軍基地が返還された。
しかし、そのうち19事案でしか土壌調査は実施されていない(※他1カ所は近く予定、2018年8月10日現在)。理由は単純だ。長く軍用地の汚染について、関心を持たれていなかったのだ。
そのため、法整備は遅れ、結果としてほとんど調査もされないまま多くの土地が返還されていた。以下に示す資料は、1995年に返還特措法が施行されて以降、沖縄防衛局が返還軍用地で土壌調査を実施し、原状回復措置をとった土地だ。
最も原状回復費がかさんだのは、キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区だ。
普天間基地の傍、西海岸が一望できる傾斜地には、青々とした芝が敷かれ、149棟の米軍人住宅が建っていた。庭には、遊具やバーベキューセットが置かれ、家族が団らんする風景も見られた。子どもの頃は、その前を通るたびに、自分が住んでいる狭いアパートに比べ、アメリカ人は贅沢な暮らしをしていると羨んだものだった。
返還は2013年、アメリカ軍再編計画の一環で、日米合意された。再編計画には、普天間基地も含まれている。つまり、辺野古新基地建設と同じ文脈で語られているということだ。
2015年4月4日、返還式典に出席した菅官房長官は、次のように語っていた。
「安倍政権としては、沖縄の負担軽減を目に見える形で一つ一つ実現してまいります」
しかしこの土地からは、新たな負担の実相が見えてきた。土壌からは、環境基準を上回る鉛や油、そして発がん性が指摘されるジクロロメタンなどが検出されていたのだ。
西普天間住宅地区。149棟の米軍住宅が建っていた=2015年4月(提供:琉球朝日放送)
汚染された土壌の処理や、返還時にそのまま残されていた古い建物の撤去などに、日本政府は巨額な費用を投じていた。約51ヘクタールの土地の返還には、約65億1700万円が費やされていた。
多額の原状回復費を支払う背景には、日米地位協定の存在がある。日米地位協定第4条1項では、アメリカが土地を返還する際、原状回復の義務を免除している。
日本外交史の専門家で、沖縄国際大学法学部地域行政学科の野添文彬准教授は、1960年の安保改定時、日本側がアメリカに駐留を求めていたことを指摘する。その上で「日本側としては、基地が返還された後、元に戻してくださいという発言権が無いという構造になっていて、その構造の中に沖縄が置かれ、負担を負わされていることを土壌汚染問題は示しているのでは」と語る。
次々に汚染が発覚。キャタピラが出てきたことも
那覇から車で約1時間。国道58号を北向けに進むと、ランドマークになっている大きな観覧車が見えてくる。
左右両側には、白や黄色、ピンクなど、色とりどりの真新しい建物が積み木のように立ち並ぶ。リゾートマンションや飲食店が軒を連ね、地元の若者はもちろん、観光客、そして半パンとTシャツ姿の若いアメリカ兵たちが歩いている。
県内屈指のリゾート地として賑わう北谷町。ここは、返還軍用地がとんでもない問題を抱えていることを浮き彫りにした場所でもある。
「区画整備事業中に、何回も何回もストップするのです。油が出るとか、砲弾や小銃弾、燃料タンクが出るとか。(軍用車両の)キャタピラがそのまま出てきたこともありました」
キャンプ桑江、陸軍貯油施設は、2003年に返還された。しかし土地が地主に引き渡された後、跡地利用の最中に、次々と汚染が発覚した。
沖縄防衛局に情報開示請求を行い、入手した約6500ページの土壌調査報告書には、深刻な汚染の実相が記録されていた。環境基準を超える鉛や油といった有害物質の数々。沖縄県や北谷町の資料からは、PCBが使用されている疑いがある安定器や小銃弾、燃料タンク、油送管なども地中に残されていたことがわかった。写真には、土の中にそのまま埋められた軍用車両のキャタピラも写っていた。キャンプ桑江と陸軍貯油施設の原状回復には17億4700万円が使われていた。
2007年1月、北谷町キャンプ桑江で発掘されたキャタピラ
負担はこれだけではなかった。
北谷町では、地代が入らなくなり、生活に困っている地主を支援するため、土地の使用収益が上がるまで、固定資産税を半額免除している。これまでに町が免除した金額は約1億円にも上っている。しかも、返還から15年が経った今も、原状回復が終わっていない土地があった。
「沖縄は太平洋のゴミ捨て場と呼ばれていた」
「129億円という原状回復費用は氷山の一角、決して多くはない」
こう指摘するのは、アメリカ軍基地の土壌汚染問題を追及しているイギリス人ジャーナリストのジョン・ミッチェルだ。 続く・・・
沖縄の米軍基地から漏れ出す「永遠の化学物質」~ 米国内では至上命題と位置付けられているのに、沖縄では放置されている環境汚染
島袋夏子 琉球朝日放送記者
2020年02月16日
永遠の化学物質(フォーエバーケミカル)ピーフォス(PFOS)、ピーフォア(PFOA)とは、どんなものなのか。
撥水性や撥油性が高く、フッ素樹脂加工のフライパンや、ファストフードの包み紙、電子レンジ調理用ポップコーンの袋、絨毯、衣類、そして半導体の部品など、私たちの生活のあらゆる場面で多用されている。
だが一度体内に取り込まれると分解されにくく、蓄積されてしまう。そのため「フォーエバーケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれている。
国内外の研究では、肝臓疾患や、コレステロール値の上昇、妊婦の高血圧、低体重児出産などの可能性が考えられている。
また、ピーフォスについては2009年、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で、将来的な廃絶に取り組んでいくことが決定された。
国内では2010年、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で、半導体など不可欠用途以外での製造や輸入が禁止されている。
一方、ピーフォアについては、世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)が、動物に発がんの恐れがあると指摘している。近く国内でも規制される見通しだ。
しかしいつ、どこで、そんな有害とされる化合物が取水源に入り込んだのか。
沖縄県企業局が汚染源を「アメリカ軍基地内」だと考えたのは、取水源となっている河川や井戸群で実施した水質調査の結果からだった。
汚染源はアメリカ軍基地の中実は、日本国内にはまだピーフォス、ピーフォアに関する飲料水の規制基準が定められていない。だから沖縄県は、アメリカ環境保護局(EPA)が定めている、飲料水の健康勧告値を参考にしている。
アメリカでは飲料水1リットルあたりに含まれるピーフォスとピーフォアの合計を70ナノグラム(ナノは10億分の1)以下と設定している。では、7市町村45万人に関わる取水源はどうなっているのか見ていきたい。
拡大取水源の位置とピーフォス/ピーフォアの最大値
特にピーフォス、ピーフォアの濃度が高かったのが、アメリカ軍嘉手納基地内の滑走路脇を流れる大工廻川(だくじゃくがわ・地図右)だった。
拡大嘉手納基地のフェンス沿いを流れる大工廻川 提供:琉球朝日放送
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