Sophist Almanac

世界について知りたいとき

1749年7月9日 稲生もののけ物語 ~ 相撲取りの頭が割れて血だらけの赤子がはいでてくる

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「芸州武太夫物語絵巻」(立花家史料館蔵)

 

稲生もののけ物語、『稲生物怪録』(いのうぶっかいろく)は、江戸中期、寛延2年(1749年)の備後三次(現在の広島県三次市)のひとりの少年が経験した一か月にわたる物の怪との出会いをまとめた記録。稲生武太夫(幼名・平太郎)が体験したという、妖怪にまつわる怪異をとりまとめた記録。毎日毎日、飽きることなくいろんな「もののけ」がやってきます。

 

1749年7月10日 血だらけの

前日は庄大夫にばけたもののけが高度な心理戦をしかけてきて、平太郎は、悪夢のなかとはいえ庄大夫の首を掻き切り、自分も何度も死ぬことを考え、血なまぐさい死体を抱えたり、血のりのついた畳や壁に悩まされたのだが、

今日もふたたび「知りあい」がくる。血だらけがでてくる。

 

『三次実録物語』試訳

 十日、十日市町の相撲取り、周防屋貞八が暮れすぎにやってくる。台所の敷居口からかがんだと思うと、そのまま頭が二つに割れて、そこから赤ん坊がはいだしてきて私に張り付く。おおよそ、十ばかりでてきて、あちらこちらとはい回り、血のついた赤ん坊である。

 

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貞八という男は、五十歳くらいで、きんかあたまの赤面の大男である。そのあかご、たんだんあちこちにはいまわるうちに、私は蚊帳をつり、ねどこにはいったが、そのあかご十ばかりが、ひとつにかたまって大きな目玉となった。

 

そのうちに寝入ってしまった。

 

頭が二つに割れて、そこから生まれてくるのは、ギリシア神話なら割られたゼウスの頭から武装してでてきたアテネとかいるけど、相撲取りの「きんかあたま」からうまれてきたもののけは・・・きもい。

 

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三次ことば

きんか = あたまの毛がない