Sophist Almanac

世界について知りたいとき

1749年7月21日 稲生もののけ物語 ~ あんどんに映しだされる男、講釈をする

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「芸州武太夫物語絵巻」(立花家史料館蔵).

 

稲生もののけ物語、『稲生物怪録』(いのうぶっかいろく)は、江戸中期、寛延2年(1749年)の備後三次(現在の広島県三次市)のひとりの少年が経験した一か月にわたる物の怪との出会いをまとめた記録。稲生武太夫(幼名・平太郎)が体験したという、妖怪にまつわる怪異をとりまとめた記録。毎日毎日、飽きることなくいろんな「もののけ」がやってきます。

 

1749年7月21日、あんどんに映しだされる男

夜、あんどんを灯すと、そのあんどんに映しだされて、人の顔がくっきりと見える。そして声はしないのだけど、本を開き講釈をしている。

 

『三次実録物語』現代語訳

さて、二十一日、夜。あんどんを灯したのだけど、そのあんどんに、ある人の顔が映り、講釈をする。寝るまで、声はしないのだけど、顔、手、がはっきりと見え、指でときどき見台の上に本を置いて開けたりもする。

 

あんどん

菜種油などを燃料としたあんどんは、薄暗かったに違いない。江戸の怪奇談に定番のセットだけど、平太郎の冷静な目で記され映しだされたあんどんの影の男は、全然怖くないね。平太郎は両親を早く失うが、どのような教育を受けたのだろうか。十六歳で今や屋敷にひとりぼっちの平太郎。