Martin Luther King, Jr. 最期のスピーチ "I've Been to the Mountaintop" (1968)
Rev. Dr. Martin Luther King Jr. Memorial, Kokomo, Indiana
- I've Been to the Mountaintop (1968)
- Moses' Exodus: 出エジプト
- Spiritual: Go Down Moses
- そして40年後: Obama's Victory Speech (2008)
ひとりの人間の、命をかけた言葉とは、どんなものなのか。
このスピーチは私たちに教えてくれる。
キング牧師、暗殺前夜の最期のスピーチ
I've Been to the Mountaintop (1968)
Today's Topic
・T.S. エリオットの詩「荒地」(The Waste Land, 1922)
ビデオの冒頭、April is the cruellist month, the poet says の the poet とは、アメリカの詩人 T.S. Eliot のこと。彼の The Waste Land (荒地) の冒頭の、「四月はもっとも残酷な月」を引用しています。4月に MLK が暗殺されたので、そのような言葉から始まっています。
April is the cruellest month, breeding
文法的には the cruellist は British English の用例で通常は most cruel を使うのだろうけど、Eliot は英国好き (Anglophile) なんで、British English 的な変化になっています。この The Waste Land は、とっても難解な現代詩。私は現代詩が好きなので、学生時代、これ、かなり好きな詩のひとつだった。
・ビデオ中の Negro という表現について
Negro という言葉がナレーションで使われているけれど、これは古い表現で、現代ではとても差別的な意味を持つ言葉。今、私たちが使うと、なんでこんなわざと古い言葉を使うの ! という感じになりますから、使用不可です。要注意。African Americans / black people という単語と置き換えてご理解ください。
・Martin Luther King, Jr.「わたしは山に登った」
Martin Luther King, Jr. の全テクストはこちらから
・Robert F. Kennedy's Speech: "Assassination of Martin Luther King"
ロバート・F・ケネディ― のキング牧師の訃報によせたスピーチはこちらから
Moses' Exodus: 出エジプト
Because I've been to the mountaintop, and I've seen the Promised Land
これは旧約聖書の出エジプトの物語と重ねあわせてある。キング牧師は、ここであたかも自分の死を予言しているかのように、終焉の地から約束の地をみつめるモーゼと自分の姿を重ね合わせているんだ。
Exodus: モーゼの「出エジプト」大脱出ルート
モーゼ終焉の地、ネボ山とは、どこにあるの ???
Map of the Exodus and Wilderness Journey: The 42 Camp Sites Organized and Illustrated for the First Time in History (History of Redemption)
ネボ山から聖地を見下ろし
ネボ山の展望スポットからは、死海、エルサレム、ジェリコ、ベツレヘムなど、まさに聖書の舞台となったその場所を見渡すことができます。方向を表す図があるので、目で追ってみましょう。
『ネボ山でモーセの「約束の地」を見下ろす!』その他の都市(ヨルダン)の旅行記・ブログ by 古代遺跡な旅デスクさん【フォートラベル】
アンマンから足を延ばして、ヨルダンの歴史を感じてみませんか?旧約聖書の舞台として知られるマダバや、モーゼ終焉の地であるネボ山をご案内。ツアーの最後には死海での浮遊体験もお楽しみいただけます。
死海で浮遊体験!マダバ&ネボ山&死海1日観光<車+ガイド貸切/アンマン発> | ヨルダンの観光・オプショナルツアー専門 VELTRA(ベルトラ)
行きたい過ぎる !
Spiritual: Go Down Moses
奴隷制時代、黒人の人たちは奴隷制からの解放を希求し、黒人霊歌に祈りを込めて歌った。ここでは、エジプトで奴隷になっているヘブライ人と、アメリカで奴隷になっているアフリカ系アメリカ人とが重ねられ、解放せよというのは神の厳命であることを、コード化して歌っていた。
そして40年後: Obama's Victory Speech (2008)
くしくも、そのキング牧師の最後のスピーチから40年後。
人間の歴史というものは、遅々として何も変わらず、という感じだけど、見方を変えれば確実に変わっていく。
キング牧師が暗殺される前夜に人々に語りかけた、あの「わたしは山に登った」というスピーチから、ちょうど40年後、一人のアフリカ系アメリカ人男性が歴史に残るスピーチをする。
アフリカ系のひとびとは、選挙権はおろか、ろくに病院や学校に行くこともできなかった、そんな1968年から、わずか 40年後の 2008年、アフリカ系アメリカ人の青年が、その国の大統領になる。その運命的な瞬間、当時のいったい誰が想像できただろうか。
バラク・オバマ上院議員の勝利宣言スピーチ (Victory Speech, 2008) の後半の箇所には、キング牧師の「私は山に登った」のスピーチがまるでキラ星のようにちりばめられている。一度でもキング牧師の「山に登った」スピーチを見たことがある人間は、キング牧師の 40年前の姿が脳裏に映しだされ、現代と重なり戦慄し涙する、そんなスピーチなんだよね。
このように、Obama の Victory Speech も、まるでラップやヒップホップの sampling と同じように、旧約聖書から、黒人霊歌、そして40年前の BML の最後のスピーチ、長い歴史と文化に呼応 (call and response) し echoing しているんだ。
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