Sophist Almanac

世界について知りたいとき

歴史的にいうと国家主義は「スパイ」という言葉で国民をあおり、理不尽な憎悪や恐怖を統制に利用します


戦争をも辞さない国家主義は、国民を統制するために「スパイ」「間諜」といった言葉で国民をあおり、統制と監視に利用していきます。

 

第二次世界大戦中には、「英語が喋れる」、「米国に住んでいた」、「ミックス・ルーツである」、「在日外国人」である、「反対意見をほのめかす」、「地方の言葉をしゃべる」、などなど、ありとあらゆることで「スパイ」呼ばわりされ、無実の「スパイ」処刑・虐殺もおびただしくありました。

 

たった一つの「おまえはスパイじゃないか」という言葉で、どんどん行動や発言が厳しく統制されていく側の国民は、それではそうした締め付け被害に激しく抵抗したかというと、そうばかりではなく、

 

国民への「見せしめ」や「ガス抜き」のように使われるスパイ狩りと処刑は、ある種、心理的に「自分はスパイじゃない」という強い自己肯定感と快感にうまくつけ入るかたちで、国民も憎悪と恐怖によって支配され、スパイ狩りの共犯者・加害者、となっていたのです。

 

また沖縄戦では、無理な食糧供出や労働を強要させ、子供から老人まで戦場に駆り出しておきながら、沖縄人がスパイをしている、というデマを流して粛清し、沖縄語をしゃべっただけでスパイとしてみなし、日本軍が負けているのはスパイのせいだと、多くの人が処刑されました。久米島阿嘉島などの離島では、終戦以降も、島をコントロールするために次々に住民をスパイとして処刑しました。米軍よりも日本軍に殺される、そういう恐怖は現実のものとしてあったのです。

 

住民のスパイリストを作り虐殺にも手を染めた陸軍中野学校の諜報員「離島残置工作員

battle-of-okinawa.hatenablog.com

 

また人間の中には、「あいつはスパイじゃないか」と積極的にあることないことを言いまわる人たちもいて、「スパイ狩り」というのは、まともに畳の上で安心して寝れない恐怖政治をつくりだします。いつ、誰が、どんな恨みで、自分に対する嘘を言いつけるかわからない、という地獄の恐怖です。

 

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憲兵までゆるふわ化してしまった『この世界の片隅に』 - 読む・考える・書く

 

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全国に暗躍するスパイ暴く : 防諜戦士となれ - 国立国会図書館デジタルコレクション

 

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こうした歴史から学べば、ある種の人たちが、スパイ、スパイ、と連呼しだす時には、ああ、また国民対象のスパイ・ゲームをやってるな、と懐疑論者になってほしいとおもいます。安易に、「スパイ」という言葉が人間の心の中に醸造する「刺激」「快感」「憎悪」「恐怖」という感情にあおられてはいけません。

 

そして、もう一つ付け加えておきたいのは、かつて日本は、英語が喋れるとか、ロシア語が喋れるとか、沖縄語が喋れるとか、それだけでスパイ扱いしてきたけど、

 

最終的には、そうした外国語をしゃべれる人々が、国境を越え、窮地の中にいる人々をを救いだしてきたのだということです。非国民だ、国賊だ、スパイだ、などと迫害されてきたひとたちが、逆に、人々を戦禍から救いだしてきたという、この逆説の歴史にも目を向けていってほしいと思います。言葉が命をつなぐ架け橋となったのです。

 

battle-of-okinawa.hatenablog.com

 

言葉が殺戮から人々を救った、そういうのを調べて例をあげればきりがありません。

 

76年前までは、米国と戦争をしていたので、英語と英語を話す人たちが主にスパイ疑惑の被害を受けましたが、今はどうやら同じアジアの人たちをスパイ呼ばわりする人たちがいます。  

こういう記事を無批判に読むと、私たちの心にも「刺激」「快感」「憎悪」「恐怖」が生まれますね。疑念が生まれます。この、政治的に人工的に植え付けられる人々の中の疑念は、政府にとって、どのように政治利用できるのでしょうか。

 

どこの国も、情報収集活動など少なからずやっているし、トランプも内密にロシアやウクライナの協力を得て選挙活動をしていたことは棚上げです。自民党の政治家たちが中国政府がバックにいる中国系カジノ企業から収賄を受けていたことも棚上げして、まったくエビデンスもなく孔子学園と日本の大学と中国語を学ぶ大学生を叩く理由はどこにあるでしょうか。

 

こうした記事を執念深く何度も何度も出しているのは、日本メディアでは主に産経新聞です。孔子学院はブリティッシュ・カウンシルや日仏会館などと同様、文化・語学機関で、べつだん物珍しいものではありません。孔子学園は政治的な発信は一切しない方針をとっているので、このような攻撃に何の反論もしません。ウィキペディアのページも悪意的に書きかえられられ、もう救いようがありません。

 

このような「○○はスパイだ」キャンペーンの拡散は、単純に信じるのではなく、こういうデマを広範囲に拡散し国民をあおりたてることで、誰が、どんな利益をこうむるのか、冷静なまなこで見つめていきましょう。

 

諜報員なんて、いつの時代も、どこの国にもいますよ。いないとは言いません。かつて日本でも、○○はスパイだ、などと情報戦活動を主導していたのは、だいたいが軍関連の諜報員でした。わかりやすく言いますね。○○はスパイじゃないのか、とリストを作らせ、スパイ狩りの情報戦 (秘密戦) を先導してた人たちが本物の諜報員だったんです。(See. 陸軍中野学校)

 

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沖縄スパイ戦史

 

お薦めの書籍紹介

 

あいつはスパイじゃないのか、いやお前がスパイだ、と住民に恐怖と疑念を植えつけ、スパイ狩りさせることで、住民を心理的に支配しようとする、それを軍は「秘密戦」とよびます。地獄のような戦争は、兵器の戦争だけではない。秘密戦で住民の心理を支配することから起こっていった、そのことは、日本はちゃんとその過去から学んでおくべき歴史です。

 

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ただでさえ、インターネット上ではすでに「お前は工作員か?」「お前は反日か?」などということばが飛び交っているのである。そこに曖昧な工作員幻想を垂れ流せば、思わぬ反応が起こらないとも限らない。

「スパイに警戒せよ」と「真の日本人になれ」は、遠いようで案外と近かった。当局に工作員対策を求めるのはけっこうだが、それが別の意味に広がっていかないかどうかは注意しなければならない。

「スパイを防ぎたければ、真の日本人になれ」戦中に政府が広めた思想(辻田 真佐憲) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

 

70数年前、日本の知性は、ものすごく簡単に「鬼畜米英」「○○はスパイ」というデマにからめとられていきました。もう完全に洗脳状態にあり、枢軸国でもっとも長く、地獄のなかで情報に踊らされていたのです。簡単に国家主義に騙されてしまうのは、本当の知性とは言えません。

 

いつの時代も、エビデンスもなく、三者を、スパイじゃないか、スパイじゃないか、などと騒ぎ立てるひとたちには、徹底的に気をつけろ !  ということです。

 

反中感情をあおりにあおっているトランプ大統領ですが、どれだけトランプが中国を愛してるといっているか、聞いてみましょう。つか、この編集した人、ジーニアス (笑) ! 

 

 

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