Sophist Almanac

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オルト・ライト ( 1 ) 差別されているのは白人のほう!? - 白人の中の不公平感・被害者意識というものを煽り支持を拡大していく手法

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トランプ勝利の流れを作ったといわれる

Alt-Right  (オルト・ライト) ってなに?

 

オルト・ライト、あるいはオルタナ右翼ともよばれています。

従来のアメリカの右翼というと、白人至上主義の KKK (Ku Klux Klan) などがありましたが、それと変わる (alternative) 新しい右派 (right) という意味で、その中心人物の一人はここにでてくるリチャード・スペンサー氏。

 

 

でも騙されてはいけません。オルト・ライトは決して新しくもなく、結局は、旧態依然とした白人至上主義で性差別主義の右派にしかすぎないのです。でも、その極右組織の看板たるネーミングを変え、ネットで特に若者たちや不満を感じている中高年男性に販路を拡大していくやり方は、やはり新しい時代の新しい右傾化運動なのかもしれません。

 

そしてそれはよその国の問題なんかではなく、

今この日本でも起こっているという事もしっかり認識しておきたいね。 

 

今日は、わかりやすくオルトライトについて、

立命館大学の南川先生のお話を聞いてみましょう。

 

勢いを増す新たな白人至上主義 「オルト・ライト」

 国際報道2018 [特集] | NHK BS1

2017年2月24日(金)

 

オルト・ライト団体 代表 リチャード・スペンサー氏
「ハイル・トランプ!ハイル・白人!ハイル・勝利!」

 

youtu.be

アメリカで勢いを増す白人至上主義、「オルト・ライト」。

「アメリカは白人男性だけのものだ。」

白人こそがアメリカを支配すべきだとする過激な主張。
若者を中心に急速に支持を広げています。


全米メディアは、この動きをこぞって批判。

「人種差別を肯定するのですか?」

オルト・ライト団体 代表 リチャード・スペンサー氏
「ええ、“人種差別”を肯定します。」

 

アメリカ社会を大きく揺さぶる「オルト・ライト」。
そのキーパーソンを直撃しました。

 

田中
「アメリカで勢いを増している新たな白人至上主義、『オルト・ライト』。
『新たな右翼』という意味で、『オルタナ右翼』とも呼ばれています。
それが今、若い白人男性を中心に水面下で支持を広げているとされています。」

 

佐藤
「白人至上主義、これまでにもいろいろなグループがありました。
南北戦争後にできた『KKK=クー・クラックス・クラン』。
そして、『ネオナチ』と呼ばれるグループもあります。


しかし、今回取材した『オルト・ライト』、これまでのグループと何が違うかといいますと、それは『虐げられているのは白人だ』と主張している点です。


なぜ今、こんな主張が注目されているのでしょうか?」

 

www.nhk.or.jp

リチャード・スペンサー氏、38歳。
オルト・ライト運動を提唱する中心人物です。


「アメリカを支配するのは白人」。
マイノリティーの主張には、耳を傾けません。

「マイノリティーの人権を踏みにじる時代に逆戻りさせたいのか。」

 

オルト・ライト団体 代表 リチャード・スペンサー氏
「気持ちはわかります。
マイノリティーはさぞ大変でしょうね。
だから、あなたみたいなマイノリティーになりたくないんです。」

 

全米で大きな議論を巻き起こしているスペンサー氏が、NHKの単独取材に応じました。

「あなたは人種差別主義者なのですか?」

オルト・ライト団体 代表 リチャード・スペンサー氏
「何と言われてもかまいません。
ただ白人としての誇りを持ってほしいと主張しているだけです。」

 

スペンサー氏は南部テキサス州出身。
9年前にオルト・ライト運動を始めましたが、当初は注目されることはありませんでした。

 

転機となったのは、去年(2016年)の大統領選挙。
クリントン氏は、差別的な発言を繰り返すトランプ氏に対して、オルト・ライトとの関わりを指摘しました。

 

ヒラリー・クリントン
「トランプ氏が掲げる反イスラム、反移民、女性蔑視は『オルト・ライト』と呼ばれる差別思想の主張だ。」

この発言が、オルト・ライトという言葉を広めるきっかけになったのです。

 

さらに、スペンサー氏がトランプ氏の勝利を祝うために使った言葉は、世界にも衝撃を与えました。

オルト・ライト団体 代表 リチャード・スペンサー氏
「ハイル・トランプ!ハイル・白人!ハイル・勝利!」

 

ヒトラーをほうふつとさせる言葉に、支持者たちもナチス式の敬礼で応じました。
トランプ氏が勝利した大統領選挙は、オルト・ライトという過激思想を表舞台に押し上げることになったのです。

 

オルト・ライト団体 代表 リチャード・スペンサー氏
「トランプ氏と響き合いながら一緒に成長できたと感じています。
多くの人がオルト・ライト運動に魅了され、支持者が劇的に増えています。」

 

スペンサー氏の勧誘活動は、主にインターネット上で行われています。

 

“君は何者だ。”

偉大な文明を築いたヨーロッパの白人の子孫だと、選民意識を駆り立てます。

 

“私たちはヨーロッパの文明・精神・歴史を継ぐ者なのだ。”

ツイッターのフォロワーは、およそ5万人。
この1年で5倍に急増しました。

 

 

「新大統領就任に乾杯!」

支持者の多くは、進学や就職で不満を募らせている若い白人たちです。

 

「白人が権利を主張すると、それだけで“差別主義者だ”とクソみたいな言葉を浴びせられる。」

「僕はスペンサー氏と巡り会うまで迷える子羊だった。
ようやく居場所を見つけた気がする。」

 

オルト・ライト団体 代表 リチャード・スペンサー氏
「白人はひどい逆風にさらされているんです。
雇用を奪われ、政府機関は移民を増やそうとしている。
白人も自分たちの権利を主張すべき時が来たのです。」

 

注目が高まるばかりのスペンサー氏。
しかし、社会の亀裂を深めているとして、反発する人たちも急増しています。

 

「大きな声ではっきり言おう。
スペンサーは出て行け!」

 

ゆく先々で起こる反対運動。
オルト・ライトとの関係が指摘されるイベントでは、暴動も起きています。

 

先月(1月)、スペンサー氏は活動の拠点を首都・ワシントン郊外に移しました。
政治の中心地で足場を固め、トランプ政権に直接働きかけていきたいと考えています。

 

「政界進出を狙っているんですか?」

オルト・ライト団体 代表 リチャード・スペンサー氏
「検討しています。
楽しそうですからね。
私は多くの政治家よりも優秀で、見た目も頭もよく、魅力的な存在です。
おもしろくなりそうですよ。」

 

佐藤
「スタジオには、アメリカの多文化主義、人種の問題について詳しい、立命館大学の南川文里(みなみかわ・ふみのり)教授にお越しいただきました。」

田中
「なぜ今、アメリカでオルト・ライトが広がっているのでしょうか?」

 

 

立命館大学 教授 南川文里さん
「まず、オルト・ライトのスペンサー氏、彼の述べる白人至上主義とか、その中の主張そのものは、おそらくあまり新しいものはないと思います。
ただ一方で、彼の支持者を集める手法、例えばインターネット、YouTube等を活用するといったものは、新しい白人至上主義の流れとして注目するべきかと思っています。
ただ私が思うには、おそらく白人至上主義の問題以上に、彼の掲げる、ある種、白人が今犠牲者になっているという主張に共鳴する白人が多いということが、より大きな問題ではないかと考えています。


 

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こちらは『白人の方が差別を受けている』と感じる、白人側が『差別をされる』と考える人が、全体でも57%、労働者層であれば66%という、半数以上の人がこういう感覚を持っている。


こうした、白人の中のある種の『犠牲者意識』の高まりというものが、オルト・ライトだけではなくトランプ政権を支えるような、大きなすそ野を形成しているのではないかと考えています。」

 

田中
「そのオルト・ライトや白人至上主義者は、黒人のオバマ大統領の登場で増えたとも指摘されていますし、また、今おっしゃったトランプ大統領の誕生によってそれが一気に表に出てきたという指摘もありますが、その2人の大統領の存在というのはどう影響しているんでしょうか?」

 

立命館大学 教授 南川文里さん
「やはりオバマ政権期に、こうした運動が形を見せるようになってきたということは注目するべき現象だと考えています。
特にオバマ氏が大統領になった時というのは、初めての黒人の大統領であるということもあって、アメリカ全体、特に白人層の中では、これで、これまでのアメリカの人種対立の問題とか、そうした歴史的な問題が一旦解決したのではないかという議論も登場してきました。

 

これは『ポストレイス (post-race) =人種問題解決後の米国』という言葉で語られたわけですが、こうした意識の広まりというのが、すでにアメリカは人種問題が解決したはずなのに、やはり依然としてマイノリティーと白人との格差などの問題が残っている。


そうした中で、白人たちに、やはりマイノリティーの権利を尊重する、あるいは彼らの状況をより配慮するというようなことが議論されていく中で、白人たちの中では、平等になったはずなのに、なぜこうした配慮をしなければいけないのかという不公平感というのがオバマ政権下において広がっていったという問題があるのではないかと考えています。

 

ただ問題なのは、実はこのポストレイスという考え方そのものが、現実を反映していないということです。


それはオバマ大統領自身が先日の退任演説の際に、すでにこのポストレイスのアメリカというのは現実的ではない、アメリカの人種問題は依然として強力であるということを述べていたように、依然としてアメリカではこうした人種をめぐる問題というのは、格差の問題、警察と黒人との対立といった問題など、かなり多くの問題がまだ残っているわけです。

 

ですからマイノリティーの側には、当然ながらまだまだアメリカの人種問題は解決していないと。

 

この辺りの認識のギャップというのが、より白人層の中における意識というものを強めていったという可能性はあるのではないかと考えています。
そしてトランプ大統領は、こうした白人の中の不公平感・犠牲者意識というものを、むしろあおるような選挙戦を戦ったように私には思えました。


移民によって脅かされるアメリカ、あるいは麻薬問題などに直面する中で、白人が危機に追いやられていると強調することによって支持を広げていったということは、1つ、彼の当選の背景にはあったのではないかと考えています。」

 

田中
「そしてそのトランプ政権の中で、ホワイトハウスに、オルト・ライトとのつながりが指摘されているバノン首席戦略官、そしてミラー大統領補佐官。こうした人々が政権の中枢に入っている。
これはどう見たらいいでしょうか?」

 

立命館大学 教授 南川文里さん
「先ほどもインターネットの話が少し出ましたが、元々バノン首席戦略官はこのオルト・ライトが活動しているインターネットサイト (註・Breitbart News Network) を運営していて、そうしたつながりというのも当然あると思いますし、そうした中での考え方というのが政策にも反映されている。


特に先日の移民に対する入国禁止の大統領命令などは、やはりこうした人たちの考え方を反映したものだったのではないかと思います。
ただ、今後もこの傾向が続いていくのかどうかというのは、まだ少し不透明なところがありますので、こうした政策への支持や反対がどういう傾向を見せていくのかということによって、おそらく判断されていくのかなと考えています。」

 

田中
「この流れを断ち切るには何が必要だと考えていらっしゃいますか?」

 

立命館大学 教授 南川文里さん
「もう1つのアメリカの形、つまり多様性を尊重する、そうした動きというのが出てきた。
そうした揺り戻しがやはりこれからも起きるのではないかということです。

 

両者のせめぎあいの中で今後のアメリカというものを見ていく必要がありますし、トランプのアメリカだけではなく、もう1つのアメリカの姿も見ていきながら、しかし同時に白人の犠牲者意識についても少し注意深く見ていきながら、次のアメリカの姿を探っていくということになるのではないかと思います。」

 

格差社会で置き去りにされてしまった感のある白人貧困層が、自分たちの生活の苦しさや疎外感の原因を、複雑な権力構造のひずみの中に見出すのではなく、マイノリティーや移民や女性たちがわるいのだ、と提供された「答え」をすんなりと受け入れ、「居場所」のように感じてしまう現実、こうした人々の右傾化に支えられた政権。新しいメディア SNS を通して拡散されていくヘイトや右翼思想。

 

こうした問題は、フェイクニュースのチェックシステムや組織、そして学校でのメディアリテラシー教育がないせいで、日本ではさらに深刻といっていいかもしれません。

 

移民や外国人のせいで、不利益を被っているのは「日本人」だ、という「被害者意識」は、あちこちで渦巻いています。またそれを煽るデマやフェイクニュースが広く拡散されていて歯止めもかかりません。

 

日本の社会保障費や教育費が削られているのは、政権のせいではなく、移民や外国人のせいだと思いこむのは簡単ですが、どうやったらそういう排外思想とデマを打ち破ることができるのか、

 

ひとりひとり、考えていきたいですね。