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授業でよく使う VOAってどんなメディア !? ~ トランプ大統領が VOA を批判の矢面に !

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トランプ政権がアメリカ国営放送を「中国プロパガンダ」と批判 !?

 

私たちが授業でもよく参照するアメリカ国営放送 VOA (Voice of America) ですが、今、トランプ政権の攻撃の矢面に立たされているようで、びっくりしました。

 

www.nytimes.com

 

トランプ大統領は自分の疑惑やスキャンダルを鋭く追及するメディアを逆に批判し、CNN を「フェイクニュースだ」と、BuzzFeed を「崩れる生ごみの山だ」などといって煽ってきましたが、

 

とうとう、アメリカ国営放送 VOA まで「中国のプロパガンダ」だと批判し始めたのですね・・・。歴史的にアメリカのプロパガンダを担ってきた過去のある国営放送 VOA が「他国のプロパガンダ」とか、意味わからんし。

 

日本でもニュースになったようですので紹介しますね。この背景には何があるのか、それも、さらにグロい話になっています。

 

東京新聞<メディアと世界>

米政権「米国の声」も批判 「中国の宣伝活動増幅」根拠乏しく

2020年4月24日

 【ワシントン=岩田仲弘】米中両政府が、新型コロナウイルスの感染源や初期対応を巡り非難合戦を繰り広げる中、トランプ米政権が政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)を「事実を伝えずに、中国のプロパガンダ(宣伝活動)を増幅させている」と批判した。メディア関係者は、根拠に乏しい異例の攻撃に「トランプ大統領はVOAを自らの宣伝マシンに変えようとしている」(ワシントン・ポスト紙)と反発している。

 

 ホワイトハウスは、毎日発行するオンラインのニュースレターで、VOAが毎年二億ドル(約二百十五億円)の予算を使っているにもかかわらず「税金を使って米国民ではなく、米国の敵の声を代弁している」と主張。具体例として四月八日にツイッターに投稿された中国湖北省武漢市の「都市封鎖」解除を祝う市内のライトアップの映像や、都市封鎖を「成功例」と指摘した記事(いずれもAP通信の配信)の掲載を挙げた。

東京新聞<メディアと世界>米政権「米国の声」も批判 「中国の宣伝活動増幅」根拠乏しく

 

AP通信の投稿を ⇩ リツイしたら中国プロパガンダなの? ていうか、武漢が長いコロナ封鎖から復帰したツイート、しない方がおかしくないですか?

 

 

 さらに中国の統計の正確性が疑問視される中、米国の死者数が中国を上回ったことを指摘したと批判。トランプ氏も記者会見で「VOAの報道は最低だ」と非難した。

 

 これに対してVOAトップのアマンダ・ベネット氏は声明で「VOAは公的資金を受けつつ、独立したメディアとして中国政府やその官製メディアが流す多くの情報の誤りを暴いてきた」と反論。ウェブ上に、中国政府が無症状の感染者を感染者数の統計から除外したり、国内では使用を制限しているツイッターを駆使して偽情報を拡散している実態を報じた計十九本の記事のリンクを掲載した。

東京新聞<メディアと世界>米政権「米国の声」も批判 「中国の宣伝活動増幅」根拠乏しく

 

こちらですね。

www.insidevoa.com

 

しかし、この輝かしい経歴を持つジャーナリストのアマンダ・ベネットさんは VOA の局長でしたが、その後、VOA から追われるように辞職します。(涙)

 

中国駐在のVOAの報道スタッフは実際、ポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙などの記者とともに三月、中国政府から追放処分を受けている。

 

報道の自由を擁護する国際非営利団体ジャーナリスト保護委員会(CPJ)は声明で、トランプ政権のVOAに対する攻撃を「言語道断だ。検閲が広く行われている国々の市民は、自らの健康と安全をVOAのコロナウイルスに関するニュースに依拠している」と批判。ポスト紙も「根拠も示さずに相手を中傷し、扇動的な攻撃で追い詰めるやり方は(一九五〇年代前半に共産主義の脅威をあおった)マッカーシズムのようだ」と非難した。

 

ボイス・オブ・アメリカ(VOA)> 第2次大戦中の1942年2月、主にナチスドイツの宣伝放送に対抗するために設立。東西冷戦期には、反共産主義を訴える米政府の対外宣伝を担った。76年に(1)常に信頼される情報源として正確で客観的なニュースを提供する(2)特定の米社会を代弁するのではなく、米国を代表して重要な思想や制度をバランスよく伝える(3)米国の政策を正確に伝え、それに関する責任ある議論や意見も提供する-を柱とするVOA憲章が成立。現在は世界47カ国で、テレビ、ラジオやインターネットで放送されている。

東京新聞<メディアと世界>米政権「米国の声」も批判 「中国の宣伝活動増幅」根拠乏しく

 

そもそも VOA って、冷戦時代は共産圏に対する米軍のプロパガンダ放送として沖縄などの米軍基地の中にいくつか VOA があったぐらいなのですが、

 

それでも欧米のメディアは (政権に親和的な日本のメディアと比較し) 概して報道の自由を戦ってきた歴史から、ほんとうに健全なメディアのバランス力を保つ強い底力があり、たとえば国防総省の管轄下にある星条旗新聞』ですら、よく取材して、時には米軍に不利になるほどの、とてもよい記事を書きます。その記事が例え米軍に不利になるようなものであったとしても、多くのアメリカ兵士や退役軍人や国民のためにあるメディアですから、長じてはかならず米軍のためになるという、強い信念が感じられます。国防総省の中にあり、米軍の準機関紙でありながらも、このようなメディアの独立性を保てるという、そこには、メディアとは何かという通念 (common sense) が、日本のメディア界とはまったく違う形で根底に流れているような気がします

(トランプさんはその『星条旗新聞』も閉予算打ち切りで閉鎖させようとします。)

 

ところが・・・

 

まず最初に、ホワイトハウスのリリースしたものをあげておくね。目を疑うような内容です。こんな記事がホワイトハウスの公式ホームページからでてくるのがびっくりで、多くの人は、ハッカーホワイトハウスの Homepage を乗っ取ったのか、と思ったぐらいです。

 

4月10日のホワイトハウス通信 ⇨「パンデミックの渦中で、Voice of America は外国のプロパガンダ推進のため、あなたの税金を使っている」

www.whitehouse.gov

 

まさに十日遅れのエイプリルフールみたい・・・。

 

森友学園のスクープをだした NHK の職員を圧力かけて左遷させ、辞職に追い込むという事件などにも見られるように、日本のメディアは今、かなり悲観的な状況にあるといわれていますが・・・。

 

ニューヨーク・タイムズ(NYT)東京支局長だったマーティン・ファクラーさんがこんな本出していたの知らなかった・・・。読んでみたい。

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2012年末に第二次安倍政権が誕生してから早や3年。その間、大きく変わったことが権力とメディアの関係だ。朝日新聞に代表される政権に批判的な大手メディアはなぜ軒並み”大人しく”なったのか。その背景には安倍政権の巧みなメディアコントロールと、ネットによる大転換期に対応できず組織防衛に走る既存メディアの腰砕けぶりがあった――。前ニューヨーク・タイムズ東京支局長の著者が明らかにする「世界から見たアベ・ジャパン」の真実。

 

トランプ政権、国営放送批判の真の目的は !?

トランプ政権は VOA に「毎年約2億ドルの国費を投じているから」とメディアに圧力をかけようとしていますが、VOA の側は報道の自由を守るため、必死の攻勢です。

 

www.voanews.com

 

ちょっと長い記事だけど、ほんとにじっくり読む価値のある内容です。さすが VOA

 

海外メディアはこぞって VOA 叩きをメディアの危機として報じていますが、マスクには意味がないとか、さんざんコロナ対応のスタートが間違ってたトランプ政権は、自分に対する批判をかわすため、選挙前になって国営放送まで叩いているとも言えます。

 

この背景には何があるのでしょうか。

 

Politico の記事がわかりやすくまとめています。

 

www.politico.com

 

But since then, a deeper motive has emerged: Trump is using the dispute to demand the confirmation of conservative activist and filmmaker Michael Pack, a close associate of Steve Bannon, to head the U.S. Agency for Global Media, which oversees VOA.

What’s behind Trump’s fresh push to wrest control of Voice of America - POLITICO

 

しかし、それ以降、より深い動機というものが浮上してきた。トランプはこの論争を利用して、保守活動家で映画監督、そしてスティーブ・バノンの側近であるマイケル・パックVOA を監督する米国グローバルメディア局のトップに据えたいと考えているのである。

 

やっぱりね・・・

 

ティーブ・バノンとは !?

オルトライトの活動家でトランプの選挙対策本部長を務めました。トランプを大統領にした人、と言われています。

 

sophist.hatenablog.com

 

また、自民党はバノンから選挙戦での情報戦略を学んでいるともいわれています。

 

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スティーブ・バノン氏が自民党本部、APAグループで講演 | 河井克行オフィシャルブログ「あらいぐまのつぶやき」Powered by Ameba

 

バノンの横にいるのは今話題の政治家、河井克行議員さん。バノンと最も近い日本の政治家の一人でした。また妻の河井安里議員の選挙の時には、自民党から 1.5 億円の選挙資金を得て有権者や地方議員に配ったりしていたことが問題になっています。政党助成金は国民の税金です。wwww

 

話は戻りますが、

 

VOA に圧力をかけて、こうしたオルトライトとよばれる右派系のメディア戦略家VOA のトップに据えて、政権に都合のいい報道をさせようなんて、とてもあってはならないことです。

 

アメリカ合衆国憲法 (U.S. Constitution) の憲法修正第一条 (1st Amendment) にはこう書かれています。

 

First Amendment to the United States Constitution

議会は、国教の樹立を支援する法律を立てることも、宗教の自由行使を禁じることもできない。 表現の自由、あるいは報道の自由を制限することはできない。人々の平和的集会の権利、政府に苦情救済のために請願する権利を制限することもできない。 

 

ここでも VOA 私たちに Free Press と Free Expression が Democracy にどれほど大切か、わかりやすく説明してくれていますね。

 

News Literacy - Sophist Almanac

 

その後、トランプ政権から送り込まれたマイケル・パックがやったこと

この後、VOA の親会社の CEO に例のマイケル・パックが据えられる。VOA のアマンダ・ベネットさんはそれに抗議する形で辞任。そしてマイケル・パックは次々と国営メディア系列のトップの人事を入れ替えるというすごいことに・・・。

 

過去にもいろいろと不祥事の問題を抱えているパックは議会の公聴会に呼ばれ、問題あるだろ、と、追及されています。

 

政権に都合のいいように次々とトップの首を飛ばし、また VOA に所属する海外の記者にビザ申請許可を出さないという、記者の生命すら軽んじた対応、それらが問われていますが、なんと、パックは公聴会を欠席、という・・・。

 

Lawmakers Criticize Changes at US International Broadcasting Networks | Voice of America - English

 

VOA をコントロールするために送りこまれたパックが議会で問題になってることを報じる VOA ・・・。

 

70年代から公正なメディアを目指してきた VOA が、この時代にこんな目に合おうとは、、、

 

トランプが送りこんだパックの元でも素晴らしい記事を書き続けようとしている VOA の記者さんたちは素晴らしい仕事をしていると思います。

 

あと1か月後で大統領選挙ですが、ほんとにはやくこの状況から VOA を救い出してほしいです…。

 

VOA の記者さんたち、負けないで !!!

 

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大統領のツイートに振り回される記者たち - 松本一弥|論座 - 朝日新聞社の言論サイト